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ショック

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  • ■緊急時の処置

    【共通の対処】

    心肺蘇生を念頭にABCの確保をする。気道確保し,酸素投与,必要なら補助換気を行う。

    末梢静脈路確保・細胞外液か生理食塩水の輸液を開始する。心原性以外は大量の輸液負荷を早急に開始する必要がある。心原性でも漫然と実施し続けることは望ましくないが,まずは実施することは許容される。

    その他,各種モニタリングを行う。

    【病態ごとの対処】

    感染性ショック:血液など各種培養検査後,すぐの広域抗菌薬投与と輸液で十分に血圧上昇(平均動脈圧65mmHg以上)が得られなければ,昇圧薬(ノルアドレナリン,バソプレシン等)を使用する。

    アナフィラキシーショック:アドレナリン0.3mg筋注が第一選択である。

    一手目:ボスミン®注(アドレナリン)1回0.3mg(筋注)

    神経原性ショック:交感神経機能を代償するα作用・β作用のカテコールアミンを投与する。

    一手目:ノルアドレナリン®注(ノルアドレナリン)0.05~0.5μg/kg/分(点滴静注)

    循環血液量減少性ショック:2L程度の初期輸液を行う。大量出血による場合は早期の輸血を開始する。

    心原性ショック:急性心筋梗塞では,緊急PCI(percutaneous coronary intervention)による再灌流で心機能の回復をめざす心筋のポンプ機能を高めるドブタミン投与に加えて,大動脈バルーンパンピング(intra-aortic balloon pumping:IABP),人工心肺装置(percutaneous cardiopulmonary support:PCPS)などの機械的なサポートをする。頻脈性不整脈の場合は同期下電気ショックや薬剤によるレートコントロールを,徐脈性不整脈の場合はアトロピンなどの薬剤投与,経皮ペーシングを実施し,最終的に経静脈ペーシングを実施する。

    一手目:ドブポン®注(ドブタミン)1~10μg/kg/分(持続静注)

    緊張性気胸:胸腔穿刺や胸腔ドレナージによる緊急脱気を実施する。

    心タンポナーデ:心嚢穿刺・ドレナージ,心嚢開窓術を実施する。

    肺血栓塞栓症:線溶療法(t-PA),ヘパリンなどの抗凝固療法に加え,重篤な場合にはPCPS装着を実施する。

    ■検査および鑑別診断のポイント

    心原性ショックの鑑別が優先される。ショック患者の初期治療として大量輸液が実施されることが多いが,心原性の場合には異なる対処が求められる。

    【心電図】

    12誘導心電図:虚血性心疾患,徐脈・頻脈,心筋炎,心膜炎を鑑別する。

    【画像】

    心臓超音波:虚血性心疾患(区域性の壁運動低下)と心筋炎(びまん性壁運動低下と壁肥厚や輝度上昇)や,弁膜症,たこつぼ心筋症の鑑別には欠かせない。心原性以外にも心嚢液貯留から心タンポナーデの確定,右心房右心室拡張から肺血栓塞栓症を疑う根拠になる。

    造影CT:肺動脈の血栓・下肢深部静脈血栓の存在から肺動脈血栓塞栓症を確定する。

    【血液検査】

    緊急性が問われる病態なのであまり活用はされない。

    感染性ショックの場合WBC上昇(または低値),CRP上昇などの炎症所見を認める。

    肺血栓塞栓症の90%以上でD-ダイマー上昇を認め,低値の場合はほぼ否定的である。動脈血液ガス分析ではCO2低下がみられる。

    ■落とし穴・禁忌事項

    アナフィラキシーショックでは,ステロイドを使用しても即効性は期待できない。よって,アドレナリンが第一選択である。

    緊張性気胸によるショックではX線検査での確定診断をする時間的猶予はない。致死性なので,身体所見から判断して緊急脱気を実施しなくてはならない。

    ■文献・参考資料

    【文献】

    1) 日本内科学会:内科救急診療指針. 1st ed. 日本内科学会認定医制度審議会救急委員会, 編. 2011, p99-104.

    2) 赤坂 理:救急実践アドバンス―解剖・生理・病態から治療まで. 阿南英明, 編. 永井書店, 2012. p70-5.

    【執筆者】 阿南英明(藤沢市民病院救命救急センターセンター長)

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