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単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)[私の治療]

No.5032 (2020年10月03日発行) P.47

渡部玲子 (国際医療福祉大学医学部血液内科准教授)

登録日: 2020-10-03

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  • 意義不明の単クローン性γグロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance:MGUS)は,B細胞のクローン性増殖により単クローン性の免疫グロブリンもしくはグロブリンの軽鎖が産生され,血液中,尿中などから検出される状態である。MGUSは多発性骨髄腫(multiple myeloma:MM)をはじめとしたB細胞性リンパ系腫瘍の前がん病変と考えられている。欧米からの報告では,50歳以上で3.2%,70歳以上で5.3%,85歳以上で8.9%の罹患率とされ,罹患率は比較的高い。

    ▶診断のポイント

    異常増殖をする免疫グロブリンにより,non IgM型(IgG,IgAなど)MGUS,IgM型MGUS,軽鎖(light-chain:LC)型MGUSにわけられる。下記の国際骨髄腫ワーキンググループ(International Myeloma Working Group:IMWG)の診断基準が用いられる。

    ①骨髄血中のクローン性形質細胞が10%未満であること。
    ②MMのCRAB症状(高カルシウム血症,腎機能障害,貧血,骨病変)や悪性リンパ腫によるリンパ節腫脹,臓器腫大,発熱,体重減少など,B症状を伴わない。
    ③M蛋白の量として,non IgM型MGUS,IgM型MGUSの場合は,血清M蛋白が3.0g/dL未満である。LC型MGUSでは血清遊離軽鎖(free light-chain:FLC)比の異常があり,血中に重鎖を認めず,24時間蓄尿のM蛋白が500mg未満である。

    MGUSは診断時に自覚症状を伴わず,検診,医療機関受診時の血液や尿検査の異常から発見される。検査所見としては,血清免疫グロブリンの増加,血清蛋白分画,免疫電気泳動,尿蛋白の免疫泳動検査によるM蛋白の存在,血清FLCκ/λ比の異常が認められる。MGUSが疑われた場合,診断確定のための検査として骨髄検査を行うべきかは,本疾患の病勢進行のリスクにより判断することが推奨される(図)1)。低リスク以外の場合は,骨髄検査を行い,形質細胞の割合が10%を超えないことを確認する。また,MMへ病勢進行の可能性については,低線量全身CTあるいはX線による骨病変の検討,悪性リンパ腫に関してはCTなどの画像検査を検討する。

    【病勢の進行】

    欧米で行われたMGUS症例の長期コホート,後方視研究の結果,M蛋白の違いにより悪性腫瘍発症の状況が異なることが近年示された。IgM型MGUSでは,最初の10年間は2%/年,以後1.3%/年の発症頻度で非ホジキンリンパ腫,原発性マクログロブリン血症,ALアミロイドーシス,慢性リンパ性白血病への病態移行が生じる。non IgM型MGUSでは,0.8~1.0%/年の頻度でMM,ALアミロイドーシス,非ホジキンリンパ腫,形質細胞腫が生じる。LC型MGUSはMGUS全体の20%程度を占めるとされ,0.3%/年の割合でALアミロイドーシス,MMに病勢が進行し,23%が発病時または経過観察中に腎機能障害を伴う。

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