株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

膵癌に対する外科手術と集学的治療の方向性【新規化学療法の発展により,外科手術の予後延長が期待される】

No.4905 (2018年04月28日発行) P.55

青木武士 (昭和大学藤が丘病院消化器一般外科教授)

藤井 努 (富山大学大学院医学薬学研究部消化器・腫瘍・総合外科教授)

登録日: 2018-04-28

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 膵癌に対する外科手術と集学的治療の方向性について,富山大学・藤井 努先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    青木武士 昭和大学藤が丘病院消化器一般外科教授


    【回答】

    数年前の新規化学療法(Nabパクリタキセル,FOLFIRINOX)の承認までは,膵癌に対する有効な治療は外科手術だけでした。先達が昇華してきたわが国の膵癌手術手技は世界一卓越したものであったことは間違いありませんが,そのような積極的手術が長期予後にまったく寄与しなかったのも,また事実です。「外科手術だけでは膵癌を完治させることはできない」ということを,まずはしっかりと認識する必要があります。

    門脈などの主要血管浸潤を認めない,もしくは軽度である切除可能(resectable)膵癌に対して術前治療が有用であるかどうかは,2015年12月に登録が終了した全国多施設共同無作為化比較試験Prep-02/JSAP-05試験の結果を待つ必要があります。術後補助化学療法は,経口フッ化ピリミジン製剤であるS-1が有意に予後を延長させることが示されています1)

    門脈系に浸潤する切除可能境界(borderline resectable:BR)膵癌(BR-PV)に対しては,手術先行での予後は不良であり,術前治療後の外科切除が望ましいとされていますが,高いレベルのエビデンスでは証明されていません2)。韓国で行われたBR膵癌に対する手術先行 vs. 術前ゲムシタビン併用化学放射線治療の無作為化比較試験3)では,手術先行群の予後が有意に不良であり,試験が早期中止とされています。

    残り969文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top