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【論点】急性上気道炎治療に関する若年成人患者の意思決定へのアプローチ

No.4904 (2018年04月21日発行) P.24

草場鉄周 (北海道家庭医療学センター理事長)

登録日: 2018-04-19

最終更新日: 2018-04-17

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Bを選びます。欧米人と比べて日本人は医師の権威を尊重し医師に勧められる治療に従う傾向が強いと言われてきましたが,近年実施された若年成人を対象とする急性上気道炎治療に関する日米比較研究では,両国ともに治療の意思決定に積極的に関わる姿勢は同様で,日本人のほうがむしろ治療を自分で選びたい傾向が強いようです。こうした患者へのケアに有効な決断の共有の方法を紹介します。

1 わが国における診療の意思決定スタイルの変遷

診療に関する意思決定のあり方は国民性や文化の影響を受けやすい。わが国で行われた過去の研究では,医師のパターナリズムや依存しやすく受け身の国民性の影響で,積極的に意思決定に関わろうとする患者の少なさが指摘されていた。こうした前提は,多忙な外来診療中に患者から情報を短時間で収集し医師が専門的立場からベストと考えられる治療を提供して了承を得るという,わが国のプライマリケア診療スタイルを正当化する1つの要因であったと考えられる。その一方で,2011年に国際社会調査プログラム(International Social Survey Programme:ISSP)が実施した「健康」に関する調査の結果では,わが国は医療のアクセスが良い反面,医師の治療に対する満足度は70%と全31の参加国・地域の中で28位と低い位置にあり,医療制度への満足度も43%と25位にとどまる。また重要なのは,年層別に見ると高年層の満足度は高いが若年層の満足度が低い点である。分析の中では,国民の医療への期待が,フリーアクセスに代表されるアクセスの良さから診療の内容や質の高さへとシフトしていることが1つの要因として挙げられている。

このことからも,これまでわが国の風土に合致していた短時間での医師主導の意思決定のあり方は,時代の変遷に伴う国民の意識の変化や医療への期待に応じて見直す必要がある。

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