84歳,女性。2007年,脳梗塞(左片麻痺)の既往があります。2011年,左顎関節を脱臼。2017年4月13日,両側顎関節脱臼があり,他院口腔外科で徒手整復,その帰途,再び顎関節脱臼を起こし来院しました。両側顎関節脱臼に対して徒手整復を試み,口腔間に両拇指を入れ,下顎を両手で把持し下顎骨を前下方に押し下げるようにした後,顎関節の後方に下顎骨を回すような操作をしましたが,痛みを訴えるだけでまったく動かず,整復できませんでした。市内の歯科口腔外科に行ってもらったところ,いとも簡単に整復してくれたそうです。顎関節脱臼の徒手整復法について,その手技をコツとともにご教示下さい。
(秋田県 F)
顎関節脱臼の治療法では,徒手整復法が第一選択療法であり,その手技にはHippocrates法とBorchers法があります1)。Hippocrates法では,術者は患者の前方に位置し,咬傷を受けないようにガーゼで包んだ両側拇指を患者対側の下顎大臼歯部の歯槽上あるいは咬合面に置き,他の4指で下顎下縁隅角部を保持した後,下顎を後下方に強く圧下しながら,第四指および第五指で前上方に力を加え下顎を回転させるようにします。これにより下顎頭は回転しながら引き下げられ,関節隆起前方斜面から離れて後方の下顎窩に復位します。
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