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(1)わが国における植込み型VADの特徴と臨床成績 [特集:わが国における植込み型VAD治療の現状]

No.4764 (2015年08月15日発行) P.20

小野 稔 (東京大学大学院医学系研究科臓器病態外科学講座心臓外科学教授/医工連携部部長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-14

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  • 植込み型補助人工心臓(VAD)は小型化が進みつつあり,体格の小さな患者への装着が可能になった

    わが国の植込み型VAD装着後の生存率は1年で92%,2年で87%と欧米より優れている

    植込み型VADの適応は数年以内に心臓移植への橋渡し(BTT)からdestination therapyへ拡大される

    1. 植込み型補助人工心臓(VAD)の登場

    わが国最初の補助人工心臓(ventricular assist device:VAD)の植込みは,1980年の東大型の体外設置型VADであった。日本臨床補助人工心臓研究会(Japanese Association for Clinical Ventricular Assist Systems:JACVAS)の登録データによると,2013年8月にわが国のVADの装着は1627例に達した。体外設置型のニプロVADが最も多く963例(59%)であるが,植込み型VADの症例数も最近急速に伸びてきた1)
    欧米では1980年後半に第1世代VADとなる拍動流型の植込み型VADが開発された。第1世代VADは,重量1.2~1.5kgでポンプ本体が大きいために植込み可能な患者体型にはかなりの制限(体表面積1.6m2以上)があった。また,多くの部品を組み合わせて拍動流をつくり出し,生体弁を組み込んでいたために2年以内での故障が多く,安定した長期補助が困難であった。90年後半以降,第2世代の小型の連続流型VADが臨床応用されはじめた。連続流型VADは,インペラと呼ばれる羽根車がポンプ内を高速回転することによって血液を送り出すことができ,動く部品がインペラ1つであるために故障が少ない。
    連続流型VADには,軸流ポンプと遠心ポンプの2種類がある。インペラの安定した高速回転を可能とするためには回転軸接触点(軸受)が必須であった。当初は脳梗塞などの血栓塞栓症やデバイス血栓といった合併症が多かったが,21世紀に入り第3世代VADが誕生し,合併症は大きく減少した。第3世代VADは,磁力による反発力(磁気浮上型)や,流体によって生まれる揚力(動圧浮上型)を利用して,インペラが軸受なしに血液ポンプ内に浮いたままで回転することを可能とした。2011年4月には,わが国で2機種の植込み型VAD(EVAHEARTTM ,DuraHeart1397904493 )が保険償還された。13年4月にHeartMate1397904493 Ⅱ,14年1月にはJarvik 2000も相次いで承認され,患者の体格や病態に応じたデバイス選択が可能となった。

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