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「国際アルツハイマー病協会国際会議に参加して」[長尾和宏の町医者で行こう!!(73)]

No.4856 (2017年05月20日発行) P.20

長尾和宏 (長尾クリニック院長)

登録日: 2017-05-22

最終更新日: 2017-05-17

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  • 13年ぶりの日本開催

    認知症の人と家族、介護者、医療介護福祉関係者、研究者らが一同に集う第32回国際アルツハイマー病協会国際会議が4月26〜29日、国立京都国際会館で開催された。日本での開催は実に13年ぶり2度目とのこと。「認知症にやさしい地域社会」や「認知症と災害」などがスローガンとして掲げられ、世界各国の認知症施策やケアに関する研究成果が、講演やポスターで発表された。各会場には同時通訳機が用意され、言葉の壁を感じないよう十分配慮されていた。春の京都での国際会議らしく、着物を着た当事者たちが印象的だった。各会場は笑顔に溢れ、どこか同窓会のような穏やかな雰囲気で、私もついつい調子に乗って、いろんな人と話し込んだ。

    この10年ほどで認知症の人を取り巻く環境は劇的に変化し、世界各地で多くの先進的な取り組みが同時進行している。例えば英国やベルギーでは、公共交通機関の乗り場や公衆トイレなどが色分けされ、認知症の人にも使いやすくするなどの工夫がなされている。一方日本でも、徘徊模擬訓練など認知症の人を閉じ込めないための活動が各自治体主導で広がっている。しかし、いまだに認知症は隠すべき病気であるという偏見が根強い。世界と比較すると、日本の認知症の啓発はかなり遅れていると感じた。

    災害への備えは大丈夫か

    「認知症と災害」のセッションでは、東日本大震災や熊本地震の時に認知症の人がどんな状況に置かれたのか報告された。避難所での大声や徘徊、種々のトラブルのため、家族と車中泊を余儀なくされたケースが目立った。認知症の人は環境の変化に敏感なので、避難所生活では状態が悪化しやすい。認知症介護研究・研修仙台センター(仙台市)の調査では、認知症の人が避難所で生活できるのは「3日が限界」だという。そのため一部の自治体では、「個室や間仕切りによるスペースの確保」や「福祉避難所」の整備が検討されている。東日本大震災後は、避難訓練時に施設入居者らの避難も併せて行われるようになったという。平時からの施設間の協力関係の構築も大切な備えである。

    筆者は東日本大震災後の連休に宮城県気仙沼市の大島を訪れた。大島にも在宅療養している認知症の人が数人おられた。島にたった1人の訪問看護師に同行させていただき、家々を訪問したが、やはり「認知症の人の避難所生活は困難」という声を聞いた。車中泊も目の当たりにした。そうした様子は記録映画「無情粗描」や拙著『共震ドクター~阪神そして東北』などにより早々に発信したが、その後のことが気になっていた。果たして熊本地震後に認知症の人が置かれた状況を知り、平時から災害に備えることの難しさを感じた。しかしまた災害はやってくるだろう。今後の防災訓練や防災計画に認知症の人の視点を織り込んでおく必要性を強く感じた。

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