受動喫煙防止対策の強化に関する自民党厚生労働部会が15日、3カ月ぶりに開かれた。部会では、小規模バー等を除き飲食店を原則屋内禁煙とする厚労省案を緩和する内容での合意を目指し議論したが、意見集約には至らず、健康増進法改正案の今国会提出は厳しい情勢となった。
自民党内では厚労省案(用語解説)を巡り、「受動喫煙防止議連」(推進派)と「たばこ議連」(慎重派)の間で膠着状態が続いていたが、今月8日、両議連幹部と茂木敏充政調会長の三者が会談し、党としての合意案を取りまとめた。
その内容は、「望まない受動喫煙は防止する」との理念を掲げた上で、飲食店を喫茶店、バーなどの業態で区別せず一括りに扱い、一定の面積基準を設けて、喫煙可能とする店舗には「分煙」等の表示義務を課すというものだ。
三者の合意案を受けて開かれた15日の部会には、塩崎恭久厚労相も出席し、改めて厚労省案への理解を求めた。これに対し、田村憲久政調会長代理(前厚労相)は合意案を基本軸に議論を進めるよう促した。しかし質疑では、両案双方に異論が噴出。特に合意案に対しては、推進派議員から表示義務や面積基準を設けることへの疑問が相次ぎ、取りまとめには至らなかった。
部会終了後、田村氏は記者団に対し「党内で協議を進め、歩み寄れる中間点を探っていく」と述べた上で、「最後は知恵が出てまとまるのではないか」との期待を示した。一方、渡嘉敷奈緒美部会長は「前に進めなければならないという点では一致したが、残念ながら振り出しに戻った」との印象を吐露。東京五輪までに受動喫煙防止対策を強化するには、法案の今国会提出が必須との認識を示しつつも「“ウルトラC”の案でも出ない限り、かなり厳しい」と語った。
塩崎厚労相はこれまで厚労省案の修正に応じる姿勢を見せてこなかった。しかし、翌16日の閣議後会見では「党と協議する以上、今の案のままというわけにはいかない」と述べ、成案を得るためには妥協もありうるとの考えを示した。
今国会の会期は残り1カ月。厚労省案を支持する声が優勢な世論調査も多い中、いかに迅速に法案として着地させるか、自民党の「調整力」が試される。
健康増進法改正案の提出を巡っては「署名合戦」も始まった。厚労省案に慎重論を唱える飲食業などの業界団体は、分煙推進を訴える署名を約117万筆集め、4月に厚労省へ提出。これに対抗すべく、日本医師会は10日、例外規定のない屋内完全禁煙を求める署名活動を開始したと発表。日医は目標数を100万筆以上とし、6月23日まで会員医療機関の待合室などで署名を要請していく。