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新専門医制度:総合診療医の役割と意義とは─日本プライマリ・ケア連合学会シンポより

No.4757 (2015年06月27日発行) P.10

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-15

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2017年度から始まる新専門医制度。19番目の基本領域に位置づけられる「総合診療医」の役割は?新制度の目指すところは? 日本プライマリ・ケア連合学会のシンポジウムの模様を紹介する。

6月14日、茨城県つくば市で開かれた日本プライマリ・ケア連合学会学術大会で、新専門医制度と総合診療専門医をテーマにシンポジウムが開かれた。

新たに創設される総合診療専門医に関しては、4月に研修カリキュラムが示され、到達目標には、「人間中心の医療」「連携重視のマネジメント」「地域志向アプローチ」などが掲げられている。

「資源分配の視点が必要」─有賀氏

シンポの中で、日本専門医機構副理事長で同機構「総合診療専門医に関する委員会」委員長を務める有賀徹氏は、総合診療専門医に求められる役割として、「社会資源を分配する視点が重要」と強調した。

有賀氏は、自身の専門である救急分野で進められてきた多職種連携や、医師のリーダーシップの下で、急変時の搬送先をあらかじめ決めておくといったメディカルコントロールの考え方を紹介。その上で、「地域全体を俯瞰できる医師が公正・正義に基づいて医療資源を分配し、住民の納得を得ていく。こういうことが今後の地域医療には必要。総合診療医にも同じことが求められると思う」と持論を展開した。

一方、座長を務めた草場鉄周氏(日本プライマリ・ケア連合学会副理事長)は総合診療医に関して「それなしに開業できないなど限定的な資格にすべきではない。総合診療に一生を賭けようという医師に、専門家としての居場所と名前を与えるものだ」と、同学会の見解を説明した。

形成的評価が研修の要─北村氏

シンポには東大院医学教育国際研究センターの北村聖氏も登壇。専門医研修の評価について、指導医が研修医の日常診療を見ながらその都度フィードバックする「形成的評価」の重要性を強調した。

北村氏は、効果的な専門医研修を小さな診療所やカンファレンスのない病院を含めたすべての医療現場で行うには、試験方法はポートフォリオ評価が「有力候補」と指摘。OSCEや筆記試験については、「現場を離れて机に向かうことが試験に通る早道になれば、研修は形骸化する」と否定的な見方を示した。

医師偏在の解消は「別の制度で」

北村氏は専門医制度そのものについても、「いずれ評価される時が来る」とし、制度開始前に評価基準を決めなければ、「地域活性化」など制度の趣旨とは別の視点から評価される可能性があると指摘。

専門医制度や総合診療専門医の導入目的を「医師の標準化を通じた医師偏在の解消」「医局の権力復活」などと評する声があることに触れながら、「偏在解消は別制度で対処すべき。制度の評価基準は、専門医の能力向上と国民の医療に対する満足度の2点であるべきだ」と強調した。

フロアからは、制度をむしろ医師の適正配置に活用すべきとの意見も出たが、北村氏は「好きな場所、好きな診療科で仕事ができる権利を手放していいという合意は、医療界で得られていない」と、制度による自由開業の制限は非現実的との考えを示した。


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