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原発性マクログロブリン血症における新たな知見 【特定遺伝子の変異を確認。遺伝子変異に基づいた治療適応が検討される時代に】

No.4833 (2016年12月10日発行) P.52

渡部玲子 (埼玉医科大学総合医療センター血液内科准教授)

登録日: 2016-12-07

最終更新日: 2018-12-03

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原発性マクログロブリン血症(Waldenström’ s macroglobulinemia:WM)は,IgM単クローン性増殖を伴うリンパ形質細胞性リンパ腫で,罹患者は高齢者に多い。無症候性の場合もあるが,貧血,血小板減少,リンパ節腫脹,末梢神経障害,過粘稠度症候群などを合併する場合もある1)。いまだに根治療法は確立されておらず,難治性腫瘍である。近年のWM症例のゲノム解析では,頻度の高い順にMyD88(90%),CXCR4(27%),ARID1A(17%)の遺伝子変異が認められた2)。MyD88L265P遺伝子変異は最も高頻度に認められWMに特異的な遺伝子変異ではないが,CLLや多発性骨髄腫,ほかの低悪性度リンパ腫での発現が少ないことから,本疾患の鑑別診断に有用である。

また,MyD88L265PおよびCXCR4WHIP遺伝子変異に関しては,病態や治療への反応性,予後の違いが報告された3)。MyD88L265P遺伝子変異ありCXC R4WHIP遺伝子変異なしの患者はBTK阻害薬イブルチニブの奏効率が高く3),また,MyD88L265P遺伝子変異を有する患者は発病時の単クローン性IgMの量が多いが,予後良好である可能性が示された1)。このように,WMにおいても遺伝子変異に基づいた治療適応が検討される時代となった。

【文献】

1) Treon SP:Blood. 2015;126(6):721-32.

2) Hunter ZR, et al:Blood. 2014;123(11):1637-46.

3) Treon SP, et al:N Engl J Med. 2015;372(15): 1430-40.

【解説】

渡部玲子 埼玉医科大学総合医療センター血液内科 准教授

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