根治可能な膵癌を確実に検出するためには,高危険群の拾い上げと,高危険群に対する膵臓に特化した定期検診が必要である
健診の超音波(US)検査では,膵癌そのものを示唆する直接所見(低エコー腫瘤像)を見落とさないことが大切であるが,間接所見であり高危険因子でもある主膵管拡張と膵嚢胞を確実に拾い上げることも重要である
膵癌の5年生存率は10%未満といまだに低く,罹患数の増加に伴い死亡数は年々増加して2013年には3万人を超え,肺癌,大腸癌,胃癌についで4番目となった1)。膵臓は厚みが2cm程度の小さな臓器であり,しかも固有の被膜がなく,すぐ近傍に重要な脈管が存在するため,TS 1(腫瘍径2cm以下)であっても既に進行癌であることが少なくないという早期診断の非常に難しい癌である。
癌検診の目的は,多数の受診者の中から癌の可能性のある人を拾い上げることである。たとえば,大腸癌検診では便潜血検査,肺癌検診では胸部X線検査を行って精査の必要な人を拾い上げ,大腸内視鏡検査や胸部CT検査などの精査に持ち込む。したがって癌検診には,侵襲がなく簡便でしかも早期の癌に対する感度の高い検査法が求められる。取り扱いが簡便なのは検体検査であるが,早期の膵癌に対して十分に感度の高い血液腫瘍マーカーなどはまだ開発されていない。
超音波(ultrasonography:US)検査も侵襲がなく比較的簡便であり,年間200万人以上が健診でUSを受け,少なからず膵癌早期発見の契機となっている。しかし健診の場では短時間に多数臓器の診断を行うため,根治切除可能な小さい膵癌病変を確実に拾い上げるのは困難である。早期に検出することが難しい膵癌を確実に検出するためには,一次検査でまず高危険群を絞り込み,次のステップとしてその膵臓に特化した検査を定期的に行う,という多段階のシステム(表1)が必要である。
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