インフルエンザウイルスの流行解析やワクチン株の選定にウイルス分離培養検査は不可欠である
インフルエンザウイルス検査の中でも,ウイルス分離培養検査の感度は最も信頼性が高く,検査のゴールドスタンダードである
ウイルス分離培養検査の精度に大きく影響する因子としては,検査材料の採取部位・採取時期・薬剤投与歴・保存状態などが挙げられる
新しい亜型のインフルエンザウイルスについては,既存の抗原検出キットやリアルタイムPCRによる遺伝子検査でとらえられない場合もあるので,ウイルス分離培養検査を考慮する
インフルエンザウイルスの分離培養検査は,A亜型・B型系統別ウイルスの流行状況の把握と,次シーズンの流行予測およびワクチン株の選定に不可欠である。感染性を保持したまま分離するのは,ウイルスの抗原変異を解析しワクチン製造の原株にすること,また,薬剤耐性変異株に対して薬剤感受性試験を実施し,どの程度薬が効きにくくなっているかを調べることが目的であり,新薬の研究開発にも用いられている。
ワクチン選定に関しては世界中の分離株に対して性状解析が行われており,国内でも感染症発生動向調査事業として全国規模で実施されている。ウイルス感染価を測定したウイルス株を稀釈し,検出限界を調べた感度試験においては,分離培養検査の感度が一番優れており,抗原検出キットと比較すると1000~1万倍以上の差がみられた1)。また,リアルタイムPCRを用いた遺伝子検査とはほぼ同等の感度であったが,当研究所における過去3シーズンの同一臨床検体を用いた成績では,A亜型・B型系統別ともに分離率が遺伝子検出率を上回っており,有用な検査であると言える(図1)。
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