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経カテーテル大動脈弁移植術(TAVI) 【TAVIを施行する際は適応,解剖学的制限,術後合併症に注意】

No.4808 (2016年06月18日発行) P.56

末田泰二郎 (広島大学心臓血管外科主任教授)

登録日: 2016-06-18

最終更新日: 2016-10-29

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高齢化の進行で大動脈弁狭窄症が増加した。生体弁の進歩により狭小弁も植え込みが可能になった。一方,重症の大動脈弁狭窄症で開胸手術が不可能または困難な患者に新しい選択肢となる経カテーテル大動脈弁移植術(TAVI)(文献1)が2013年に日本でも承認された。現在はEdwards社のサピエンXT,Medtronic社のコアバルブが保険償還されている。サピエンXTは3枚のウシ心囊膜をコバルトクロム合金で覆う構造で,23mmと26mmの2サイズが保険償還された。
TAVIには大腿動脈から挿入する経大腿アプローチと,左第5肋間を開胸する経心尖アプローチがある。基本は経大腿アプローチであるが,大腿動脈狭窄や屈曲で挿入が困難な場合は経心尖アプローチを選択する。
適応は高齢の重症大動脈弁狭窄症のうち,(1)冠動脈バイパス術後で通常の開胸術困難症例,(2)陶器様大動脈,(3)放射線治療後,(4)ステロイド投与中の患者(文献2),である。解剖学的な制限もあり,(1)二尖弁,(2)冠動脈口近位,(3)大動脈弁輪が狭すぎる,または大きすぎるもの,は除外される。
術後の合併症として,TAVI弁輪周囲逆流による閉鎖不全症が起こるが,大動脈弁輪にカフをつけて逆流を少なくしたサピエン3が近く使用可能になると,合併症も減少する。TAVIは保険償還価が高く医療経済を圧迫するので,わが国発の安価なデバイスの開発が望まれる。

【文献】


1) Leon MB, et al:N Engl J Med. 2010;363(17):1597-607.
2) Smith CR, et al:N Engl J Med. 2011;364(23):2187-98.

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