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腹腔鏡下膵体尾部切除術 【LDPの長期成績のエビデンスは十分ではないが,術後短期成績はODPと同等か,優れている】

No.4783 (2015年12月26日発行) P.50

清水 明 (信州大学消化器外科講師)

横山隆秀 (信州大学消化器外科准教授)

小林 聡 (信州大学消化器外科准教授)

宮川眞一 (信州大学外科学第一講座教授)

登録日: 2015-12-26

最終更新日: 2016-10-26

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腹腔鏡下膵体尾部切除術(LDP)は, 2012年4月に良性・低悪性膵腫瘍に対して保険収載され,その施行例数は年々増加している。日本内視鏡外科学会の第12回アンケート調査(2014年)によれば,LDP施行例数(尾側膵亜全摘,尾部切除を含む)は2008年までは年間100例に満たなかったが,2013年では年間478例に及び,腹腔鏡下膵切除全体の75%以上を占めている。
LDPと開腹膵体尾部切除術(ODP)を直接比較した無作為化比較試験は過去に報告がないが,複数のmeta-analysisやpropensity score-matched analysisを用いた比較対照研究を含むretrospective studyでは,手術時間,出血量,術後合併症発生率,術後在院日数などの手術成績,術後短期成績は,LDPはODPと同等か優れているという結果が示されている(文献1,2)。このことから,LDPの安全性はある程度確立されていると考えられる。
一方,膵癌を対象としたLDPの報告は海外から少数あるものの,症例数も少なく無作為化比較試験もないため,長期成績に関するエビデンスは十分とは言えない。『膵癌診療ガイドライン2013年版』でも,「長期成績を向上させるか否かについてはhigh volume centerでの症例の蓄積により明らかにされるべきである」との記述にとどまっている。現時点では,膵癌に対するLDPの適応は慎重に判断する必要があると考えられる。

【文献】


1) Mehrabi A, et al:Surgery. 2015;157(1):45-55.
2) Nakamura M, et al:J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2015;22(10):731-6.

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