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がん患者への早期からの専門的な緩和ケアの提供

No.4770 (2015年09月26日発行) P.58

松本禎久 (国立がん研究センター東病院緩和医療科)

登録日: 2015-09-26

最終更新日: 2016-10-26

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2010年にTemelら(文献1)が報告した無作為化比較試験では,転移性の肺癌と診断された患者に診断後早期から専門的な緩和ケアサービスが介入することで,患者の生活の質や抑うつ気分を改善し,全生存期間を延長することが示された。
Temelらの報告後も,欧米を中心に,進行がん患者に対して早期からの専門的な緩和ケアサービスの介入を行う検証試験が行われている(文献2)(文献3)。それぞれの試験において,介入の方法や得られた結果は様々であり,早期からの専門的な緩和ケアの提供方法や効果について,一定の見解は得られていない。
わが国では,2012年6月に「第2期がん対策推進基本計画」が策定され,「診断時からの緩和ケア」が重点課題として挙げられている。現在,がん診療連携拠点病院において,早期からの緩和ケアの提供体制が整備されつつあるが,実際には十分に提供されているとは言いがたい。
がん患者に対する早期からの専門的な緩和ケアの提供は重要であると考えられるが,限られた人的資源・財源の中で専門的な緩和ケアをどのように提供すべきか,医療システムの異なる国においてどのような提供体制が適切かなど,明らかではない点も多く,今後さらなる検証が必要である。

【文献】


1) Temel JS, et al:N Engl J Med. 2010;363(8):733-42.
2) Zimmermann C, et al:Lancet. 2014;383(9930):1721-30.
3) Bakitas MA, et al:J Clin Oncol. 2015;33(13):1438-45.

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