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膵癌に対する術前補助療法

No.4756 (2015年06月20日発行) P.52

石崎陽一 (順天堂大学肝胆膵外科先任准教授)

川崎誠治 (順天堂大学肝胆膵外科教授)

登録日: 2015-06-20

最終更新日: 2016-10-26

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膵癌は生物学的悪性度が高く,ほかの消化器癌に比べてその手術成績は不良であるものの,外科的切除が唯一の根治的治療である。膵癌に対する手術療法では,がん遺残のないR0手術を追求することが重要である。特に,膵癌の局所浸潤によって外科的切除を施行してもがんが遺残することが多いborderline resectable膵癌に対して,最近は術前の放射線化学療法や化学療法によってdown-stagingを行い,R0切除率を向上させようとする臨床試験が行われている。放射線化学療法ではゲムシタビン,ゲムシタビン+シスプラチン系製剤,シスプラチン系製剤+5-FU,ドセタキセルによる化学療法に放射線療法を併施するレジメンによりR0切除率の増加,リンパ節転移陰性率の増加,腫瘍の縮小が認められたとする報告がある。
大阪府立成人病センターは resectable膵癌,borderline resectable膵癌に対してゲムシタビン中心の化学療法に放射線療法を併施し,切除例のR0率は resectable膵癌で99%,borderline resectable膵癌で98%と高く,5年生存率もそれぞれ57%,34%と良好であったとしている。化学療法単独ではゲムシタビン+シスプラチン系製剤,ゲムシタビン+S-1,modified FOLFIRINOXなど多剤併用療法によりR0切除率が増加したとする報告がいくつか認められる。
しかしながら,いずれの報告もランダム化された試験ではないため,術前に腫瘍の進行のために切除不能となった症例が除外されるバイアスが生じている。今後はランダム化試験による検証が必要である。

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