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肝細胞癌に対する肝移植の適応拡大

No.4752 (2015年05月23日発行) P.48

石崎陽一 (順天堂大学肝胆膵外科先任准教授)

川崎誠治 (順天堂大学肝胆膵外科教授)

登録日: 2015-05-23

最終更新日: 2016-10-26

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肝細胞癌(HCC)に対する肝移植はHCCのみならず,その基礎疾患である肝硬変も根治できる利点がある。現在,その適応はミラノ基準(単発ならば腫瘍径5cm以下,2~3個ならば腫瘍径3cm以下)がスタンダードであり,ミラノ基準内であればHCC非合併例の移植成績と遜色ない生存率である。しかし,ミラノ基準の発表から19年が経過しており,国内外から拡大した適応基準が提唱されている。
欧米ではUCSF基準(単発ならば腫瘍径6.5cm以下,2~3個ならば腫瘍径4.5cm以下,かつ腫瘍径の合計が8cm以下),up-to-seven基準(腫瘍径と腫瘍数の合計が7以下),わが国では東京大学基準(腫瘍径5cm以下,かつ腫瘍数5個以下),京都大学基準(腫瘍径5cm以下,かつ腫瘍数10個以下,かつPIVKA-Ⅱ 400mAU/mL以下),九州大学基準(腫瘍径5cm未満,かつ腫瘍数は問わず,またはPIVKA-Ⅱ 300mAU/mL未満)がある。
ミラノ基準を逸脱し,拡大基準を満たした症例の5年生存率は70%以上で,拡大基準の正当性がある程度示されている。わが国では,HCCを移植適応とするには生体肝移植を選択せざるをえないが,生体肝移植では親族からの臓器提供となることから,十分なインフォームドコンセントのもとで,場合によってはミラノ基準逸脱例でも移植が成立する。
しかしながら,ミラノ基準を逸脱した場合は自費診療となるため,患者の経済的負担が大きく,移植を断念せざるをえないことも多い。今後は肝移植による多くのHCC患者救済のため,ある程度の保険適用拡大が望まれる。

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