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左心低形成症候群に対する両側肺動脈絞扼術の意義

No.4751 (2015年05月16日発行) P.50

崔 禎浩 (宮城県立こども病院心臓血管外科科)

登録日: 2015-05-16

最終更新日: 2016-10-26

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1981年に左心低形成症候群(HLHS)に対するNorwood手術が報告されて以来,わが国ではしばらく成功例はなかったが,1990年代よりRV-PA conduitや循環停止を用いない再建法の確立などが一般化し,その成績は2000年を過ぎて目覚ましく向上した。04年の日本胸部外科学会の報告では,Norwood手術の死亡率(病院死亡)は新生児期,乳児期とも40%であった。08年には死亡率が新生児期18%,乳児期23.4%と改善したが,注目すべきは総数で,乳児期(64例)が新生児期(49例)を凌駕した点である。その傾向は12年にはさらに進み,乳児期78例,新生児期42例となった。
その主な原因は両側肺動脈絞扼術(b-PAB)の普及にあると推察される。この概念はハイリスクな新生児期のNorwood手術を回避して,出生後の心不全をコントロールし,乳児期に待機的に施行して耐術する確率を高める戦略に他ならない。
最近の報告(文献1)では,b-PABは1st stage Norwood手術に比し,最終的に死亡率および神経発達においてもその予後を改善させないばかりか,b-PAB術後に脳血流を不安定にさせる傾向があるとも指摘されており,その功罪が問われる。また当初,b-PAB後,数カ月を経てからの2nd stageとしてNorwood+Glenn手術が施行されることが多く認められたが,術後の肺動脈狭窄の問題も多く指摘された。近年では数日~1カ月前後で2nd stageとしてNorwood手術を行うrapid 2-stage operationの施行が好まれる兆候があり,HLHSに対する治療戦略は近年さらに多様化している。

【文献】


1) Saiki H, et al:Ann Thorac Surg. 2013;96(4): 1382-8.

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