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左室形成術の至適適応

No.4747 (2015年04月18日発行) P.52

川本俊輔 (東北大学心臓血管外科准教授)

登録日: 2015-04-18

最終更新日: 2016-10-26

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2009年にNew England Journal of Medicineに発表されたSTICH trialによって虚血性心疾患に対する左室形成術の有効性はないとされ,欧米では拡張型心筋症に対するBatista手術だけでなく,虚血性心筋症に対する左室形成術もほとんど実施されなくなってしまった。
しかし,STICH trialでは患者選択に問題があり,実際に左室形成術の効果を享受できる患者群があまり含まれていなかったという指摘がある一方,わが国からは,STICH trialの対象患者群より重症な患者群における左室形成術の有効性も報告されている。一方で,左室形成術の限界と補助人工心臓治療および,それに引き続く心臓移植の良好な長期成績が明らかになるにつれ,どこまでの左室機能であれば左室形成術で効果が期待できるのか,という議論がなされている(文献1)。
現在,虚血性心筋症治療を積極的に行っている国内多施設により重症心不全外科研究会が立ち上げられ,「Survive」という虚血性心筋症を対象とした前向きレジストリー研究が開始された。脳死ドナーが不足し,植込型補助人工心臓の適応も心臓移植待機患者に限定されているわが国においては,虚血性心筋症の治療戦略の中での左室形成術の至適ポジションが模索されている。

【文献】


1) Wakasa S, et al:J Thorac Cardiovasc Surg. 2014;147(6):1868-74.

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