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SCRLMにおける肝切除のタイミングと術後補助化学療法

No.4710 (2014年08月02日発行) P.58

水口 徹 (札幌医科大学消化器・総合, 乳腺・内分泌外科准教授)

平田公一 (札幌医科大学消化器・総合, 乳腺・内分泌外科教授)

登録日: 2014-08-02

最終更新日: 2016-10-26

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大腸癌同時性肝転移(SCRLM)患者の治療における最適な手術戦略については,いまだ明確な結論は得られていない。大腸および肝臓の同時もしくは二期的切除の安全性と有効性を評価した観察研究のシステマティックレビューとメタアナリシスが報告された(文献1)。転帰尺度としては,術後の長期における生存期間と無再発生存期間,合併症および死亡を主要評価項目としている。統計学的な有意差を認めたのは術後合併症で,同時切除の場合に少なかったとされた(modified RR:0.77)。
北米における多施設研究では肝切除後の死亡危険因子として,同時性腫瘍(HR:2.1),腫瘍径6cm以上(HR:2.2),リンパ節転移陽性〔HR:2.0(N1),2.4(N2)〕,術後化学療法施行(HR:0.42)が抽出された(文献2)。
わが国のガイドラインでは,肝切除後の術後化学療法の必要性は,FFCD09002試験とENG試験の統合解析を根拠に確立されていないとしている。しかし,この研究でも多変量解析では,無再発生存期間および全生存期間において術後化学療法の有意性を示している。上記の研究でも,RCTではないとしながら,日常臨床では通常行われていると指摘されている(文献1)。
これらを総合すると,同時切除と二期的切除の腫瘍学的意義は,術後の化学療法を適切に行っていれば同等であり,同時切除の妥当性を示しているもので,社会的意義は大きい。

【文献】


1) Yin Z, et al:Hepatology. 2013;57(6):2346-57.
2) Nanji S, et al:Ann Surg Oncol. 2013;20(1): 295-304.

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