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8月の麻しん発生から何を学ぶか [お茶の水だより]

No.4826 (2016年10月22日発行) P.13

登録日: 2016-10-21

最終更新日: 2016-10-24

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▶「ぞっとした。えらいことになったと思った」。17日の厚生科学審議会感染症部会で8月の麻しん集団発生が議題に上った際、岡部信彦川崎市健康安全研究所長がこう述べた。それは麻しん患者がコンサートに参加したことを知った時。会場には2万5000人の観客がいた。しかし、幸いにも二次感染は数名に留まった。観客は20代前半が中心で、ワクチン接種による免疫保有率が高かったことで大規模集団発生を回避できたようだ。
▶昨年、日本は世界保健機関(WHO)西太平洋事務局から麻しん排除国の認定を受けた。しかし今年は8月に報告数が増加。10月5日時点の報告数は145。ウイルス遺伝子型の調査により、集団発生が松戸保健所管内と関西国際空港内事業所で起きていたことが分かった。
▶松戸の最初の症例は、発症から診断まで10日ほどかかり、その間に二次感染が発生。しかし8月27日以降は発生していない。関空での発生は33例で排除認定後では最大の規模だったが、9月2日以降の発生はない。コンサートに参加した患者は7月に関空を利用していた。
▶2006年度からのMR混合ワクチン2回定期接種導入や関係者の迅速な対応により、今回は小規模の集団発生にとどめることができたが、専門家は課題も指摘する。麻しんの診断経験がある医師が減っていることから「麻しんを診断できるよう医学教育を強化する必要がある」(大石和徳感染研感染症疫学センター長)ということ。そして2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて「輸入症例の対応を強化したほうがいい」(岡部氏)ということだ。ワクチン接種の継続的な取り組みとともに、新たな課題に合わせた麻しん対策も進めたい。

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