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真性赤血球増加症に合併した肢端紅痛症への対策

No.4695 (2014年04月19日発行) P.62

下田和哉 (宮崎大学内科学講座消化器血液学分野教授)

登録日: 2014-04-19

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

真性赤血球増加症では肢端紅痛症を合併することがあります。アスピリンを投与しながらヘマトクリット値0.45未満を目標に瀉血しますが,ヘマトクリットが目標値に達しても肢端紅痛症が消失しない場合があります。
血小板がそれほど多くなく(60万/μL程度),年齢が60歳未満,血栓症の既往なしという場合には,他の抗血小板薬への変更,またはアスピリンと他剤との併用が考えられますが,実際にはどの方法がよいのでしょうか。宮崎大学・下田和哉先生に。

【A】

肢端紅痛症(erythromelalgia)は,繰り返す四肢先端の灼熱痛と紅斑を特徴とする稀な疾患です。ご質問の真性赤血球増加症に合併した肢端紅痛症は,二次性(続発性)肢端紅痛症に分類され,真性赤血球増加症以外にも,本態性血小板血症などの骨髄増殖性腫瘍に続発します。
骨髄増殖性腫瘍に続発する肢端紅痛症は,原発性肢端紅痛症とは異なり,左右対称ではなく,片側の四肢先端に生じる傾向にあります。初期には掻痒感,穿痛感(チクチクする痛み)ですが,それが持続すると灼熱感,熱感,紅斑,腫脹へと移行していきます。小動脈が血小板によって閉塞することが原因であり,治療・予防には,血小板凝集能を抑制するアスピリン,および血小板数を減少,正常化させるハイドロキシウレアが有効です。
一般的な真性赤血球増加症の治療は,血栓症,出血の予防が目的です。そのため,血栓症の高リスク群には瀉血+アスピリン+ハイドロキシウレア,低リスク群には瀉血+アスピリンを用い,ヘマトクリット値0.45未満を目標に治療します。しかし,肢端紅痛症などの臨床症状が存在する場合は,血栓症の予防ではなく,症状の改善・消失が治療目標となります。そのため,血栓症の低リスク群であっても,ハイドロキシウレアを用いて血小板数低下を図ることも選択肢の1つです。
ただ,2次発癌の可能性が完全に否定されていないため,特に若い患者ではハイドロキシウレアの使用に躊躇することがあります。一例ごとにリスクとベネフィットを考え,その使用を決定する必要があります。
アスピリンを,他のシクロオキシゲナーゼ阻害薬,あるいはジピリダモールへ変更することも,試みる価値があります。アスピリンと他の血小板凝集阻害薬の併用は,出血のリスクが高くなるため一般的ではありません。
真性赤血球増加症ではありませんが,本態性血小板血症に続発する肢端紅痛症に対して,アナグレライド(わが国では未承認)が有効であるという報告もなされています。アナグレライドは,血小板数の減少効果のみならず,血小板による血管内皮細胞の活性化を抑制することから,肢端紅痛症の原因として,血小板数の増加,凝集能の亢進に加え,血管内皮細胞の活性化が関与していることも想定されています。

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