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ふるさと納税の納税額に上限はある?申告の必要性は?

No.4778 (2015年11月21日発行) P.62

森田純弘 (森田純弘税理士事務所所長)

登録日: 2015-11-21

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

ふるさと納税について教えて下さい。
(1)受け入れ側の市町村に上限額は設定されていますか。たとえば人口2000人ほど,年間予算10億円ほどの町村に1兆円のふるさと納税があったとしたら,どうなりますか。
(2) 100万円のふるさと納税を行って,仮に50万円相当の物品をお礼にもらった場合は,雑所得として申告義務がありますか。 (埼玉県 I)

【A】

[1]受け入れ市町村側の上限額
法律的には,受け入れ側の市町村にはふるさと納税の上限額は設定されていません。ただし,各自治体のすべてがふるさと納税を受け入れているとは限りませんし,また,各自治体でふるさと納税の受け入れの上限額を設けている可能性もあります。そもそも,ふるさと納税は,都道府県や市町村などの自治体に寄附をしたことによる減税措置としての寄附金控除制度です。それが,あたかも好きな自治体に納税をするようなイメージなので「ふるさと納税」と言われます。ただし,寄附金の受け入れ体制ができていなければ,寄附そのものができないということになります。寄附は寄附したいという側と寄附を受けるという側の双方の意思が合って初めて成立します。
最近は,ふるさと納税が話題になることも少なくありません。その大きな理由として,次の2つがあります。
(1)自分の税金としての資金を好きな自治体に役立ててもらうために,自分の意思で納税するといったイメージを持てること
(2)寄附をすることによって,その自治体から返礼品として,その地域の特産品をもらうことができること
実際に災害が起こった地域や,魅力的な返礼品を設けている地域については,ふるさと納税が金額的にも件数的にも多くなっています。
したがって,その自治体で働く職員である公務員やその地域の特産品の生産者が協力するなどの努力している場合には,寄附金額,寄附件数も増加すると言えるでしょう。場合によっては,ご質問のように人口2000人ほど,年間予算10億円ほどの町村に1兆円のふるさと納税が可能かもしれませんね。
[2]一時所得としての申告義務
ふるさと納税により返礼品として特産品を受け取った場合には,受け取った特産品の時価相当額が所得課税の対象となる場合があります。この場合の所得区分は雑所得ではなく,一時所得として課税対象となります。一時所得の場合,特別控除額が50万円設定されています。仮に返礼品として50万円相当の物品をもらっても,特別控除額が50万円ですので,所得は0となり課税されないことになります。もし,年間合計額で様々な自治体から合計額100万円の返礼品を受け取った場合には,100万円-50万円=50万円となりますが,一時所得はさらに2分の1の課税ですので,25万円が所得としての課税対象となり,申告義務があります。
一時所得=〔収入金額-必要経費-特別控除額(最大50万円)〕×1/2
雑所得と一時所得は,区分がわかりづらい部分もあります。ふるさと納税の場合,あくまで寄附に対する返礼品の贈呈であり,寄附の対価ではなく別の行為となります。つまり,寄附は反対給付を求めないということが前提なので,寄附金額は必要経費にもなりません。そこで,このような返礼品の受け取りは一時所得となり,寄附金については寄附金控除としての減税の取り扱いを別で受けるということになります。

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