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科学の功罪に触れたオバマ演説 [お茶の水だより]

No.4806 (2016年06月04日発行) P.15

登録日: 2016-06-04

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▼5月27日は、現職の米国大統領が被爆地の広島を初めて訪問した歴史的な1日となった。核廃絶を主張するオバマ大統領の演説で印象的だったのは科学の功罪に触れた一節だ。「科学によって私たちは海を越えて通信し、病を治し、宇宙を理解することができるようになった。しかし、これらの同じ発見は、これまで以上に効率的な殺戮の道具に転用することができる」と述べ、科学の革命には人間社会の「道徳上の革命も必要」と訴えた。
▼日本では今、軍事目的の研究が拡大しようとしている。防衛省は昨年度から大学などの研究機関を対象に防衛技術に応用できる基礎研究に資金を配分する「安全保障技術研究推進制度」を開始。初年度の総額は3億円で、今年度は6億円に倍増した。この制度を巡っては、自民党の国防部会が予算総額を100億円に引き上げることを求める一方、研究者間では賛否があり、日本学術会議は26日、戦後維持してきた軍事目的の研究は行わない立場を見直すかどうか議論を開始すると発表した。
▼演説に先立ち、27日にはG7伊勢志摩サミットの首脳宣言も採択された。国際保健分野に関しては主に感染症対策の強化を表明。顧みられない熱帯病や薬剤耐性など、必要でも市場原理が働かない疾患対策の研究開発を促進するほか、原子力科学技術についても放射線治療や検査機器のみならず、病原菌媒介生物の不妊化など感染症対策における平和的応用事業を歓迎するとした。
▼科学の進歩を国民の生活向上のためにどう活用するのか。軍事応用を前提とする基礎研究を今後発展させた場合、社会の道徳も同等に進歩できるのか。戦後70年を経て日本の研究機関、社会は今、重い問いかけを投げかけられている。

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