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感染症・ワクチン研究の第一人者を悼む [お茶の水だより]

No.4795 (2016年03月19日発行) P.11

登録日: 2016-03-19

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▼日本の感染症・ワクチン研究の第一人者である庵原俊昭氏(国立病院機構三重病院名誉院長)が先月、直腸癌のため66歳で逝去した。弊誌の質疑応答欄の読者諸氏にとっては、予防接種関連の質問の常連回答者としてもお馴染みだったかもしれない。
▼庵原氏は水痘ウイルスの研究で米国に留学。三重病院に赴任後、麻疹ワクチンや流行性耳下腺炎ワクチンなど数々の研究を行った。MRワクチンの研究成果に基づき2006年度から定期接種としてMRワクチン2期接種が開始された。
▼2009年に新型インフルエンザ(H1N1)の流行で日本中が混乱していた最中には臨床試験を主導し、当初2回接種が必要とされていた国産ワクチンが1回の接種で十分な免疫が得られることを証明。懸念されていたワクチン不足を解消し、国産ワクチンの早期実用化につなげた。この研究ではデータを的確に評価できる人が少なく、研究者の孤独も感じたという。限られた時間で被験者の協力を得られたことからは、日頃から関係者との信頼関係を築いていたことがうかがえる。
▼一方、日本の予防接種行政には厳しい視線を注いでいた。現在も積極的な接種勧奨の差し控えが続いている子宮頸がん予防ワクチンの定期接種化が決定した際は、きちんとした議論がなされないまま、政治判断という形で政策が “ワープ”してしまうことを疑問視。「WHOで推奨しているワクチンだから日本でも必要だ」という意見に対しては、日本での医療経済効果などを考慮した上で必要性を考えるべきだと“思考停止”に警鐘を鳴らしていた。
▼ワクチン後進国と揶揄されてきた日本の状況がここ数年改善しつつある背景には、研究を通じた庵原氏の貢献がある。心よりご冥福をお祈りしたい。

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