株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

メリハリの効いたがん対策加速化プランを [お茶の水だより]

No.4771 (2015年10月03日発行) P.11

登録日: 2015-10-03

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

▼がん対策の強化に向けた議論が現在、厚労省のがん対策推進協議会で進められている。安倍晋三首相は6月、「がん対策加速化プラン」の策定を塩崎恭久厚労相に指示した。2012年度から16年度までの第2期がん対策推進基本計画で掲げる「75歳未満の年齢調整死亡率を20%減少させる」という数値目標の達成が難しい見込みとなったためだ。
▼加速化プランはがん対策の強化が目的で、(1)がん予防、(2)治療・研究、(3)がんとの共生─が3つの柱とされている。具体的な内容として挙げられているのは、(1)が検診を含む早期発見やたばこ対策、感染症によるがんの予防など。(2)には、がん医療の均てん化や希少がん・難治性がんの対策、ライフステージ別の対策、ゲノム医療などを掲げており、(3)は緩和ケアや患者の就労支援となっている。
▼加速化プランで取り上げられているテーマは、いずれも対策が必要な課題であることには間違いない。しかし、国のがん対策全般の方針を定める基本計画との違いが分かりにくく、総花的な印象は否めない。議論を開始した9月17日の協議会では、加速化プランの役割を明確にすべきとの指摘もなされた。加速化プランに盛り込む施策は、死亡率減少を進める観点から優先順位をつけるべきではないか。
▼死亡率の増減には臓器ごとに差がみられる。国立がん研究センターは推計を基に、1995~2005年の10年間と、05~15年の10年間で死亡率の増減率を臓器別に比較。肺がんと大腸がんで死亡率減少が鈍化したことが、がん全体の死亡率減少の足を引っ張ったと分析しており、特に重点的な対策が求められる。せっかく新たな強化策を打ち出すのであれば、全般的ながん対策は基本計画に任せ、メリハリの効いた加速化プランにすることが必要だ。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連物件情報

もっと見る

page top