株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

移行期医療の体制整備を [お茶の水だより]

No.4760 (2015年07月18日発行) P.11

登録日: 2015-07-18

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

▼医学の発達は、しばしば新たな課題を生む。以前取材した在宅医療に取り組むある医師は、在宅療養の患者を5つの類型に分けていた。最も多いのは寝たきりや認知症の「高齢者」。次いで「末期がん」や「神経難病」の患者が続く。残りの2つは「子ども」と「重度障害者」だ。小児の難病患者や重度障害者はかつて幼いうちに亡くなっていたが、医療の進歩で今は高齢者になることも珍しくない。成人後の行き場がなく、小児科医が診ることも多いのが現状だ。
▼小児の難病対策「小児慢性特定疾病」は、今年1月に制度変更が行われた。その中で注目されるのが成人移行の問題だ。成人以降の受け皿がない問題に加え、循環器疾患では近年、子どもの頃に手術で治癒したとみられた先天性心疾患が、成人になって重い心不全につながるケースも報告されている。
▼小児科医がほとんど診ていた疾患で他科の医師が勉強する場がない、治療が何十年も前に行われており詳しい情報が分からない―といった状況では、小児科から他科へのスムーズな成人移行は難しい。移行期医療の体制の整備が必要だ。
▼小児慢性特定疾病の見直しで、国は今年度から「成人移行期医療支援モデル事業」を開始した。全国数カ所で委員会を開催し、ケアのポイントや疾患の特性、長期療養により起こる課題などを盛り込んだ研修資料や、医療機関の連携ツールを作成。移行先の医療機関でこれらを用いて研修を行う。研修の課題も調査し、移行期医療のモデル構築につなげる。
▼現在、政府で議論が進められている医療分野専用の番号制度には慎重な意見も多いが、セキュリティを確保した上で、移行期医療で力を発揮する可能性もあるのではないか。医療の進歩で生まれた課題を解決する力もまた、医療制度が持っている。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連物件情報

もっと見る

page top