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医療従事者が感染源とならないために [お茶の水だより]

No.4736 (2015年01月31日発行) P.7

登録日: 2015-01-31

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▼インフルエンザの流行が例年より早くピークを迎え、院内感染事例が相次いでいる。松本市の医療センターでは、白血病で入院していた70代の患者が肺炎で死亡し、40代の看護師が脳症で死亡。看護師は、インフルエンザで入院した患者3人の看護を担当していたという。西条市の病院では、入院患者と職員計29人が感染し、80~90代の入院患者4人が死亡。病院側は、インフルエンザに感染していた職員が勤務を続け、職員の間に感染が拡がったと説明している。職員は予防接種歴があり、鼻水程度の症状はあったが感染の自覚はなかった。
▼持病のある高齢者の場合、インフルエンザの院内感染で死亡してもインフルエンザが直接の死因ではないとして保健所に報告しなかったり、保健所も黙認することが少なくない。報道された事例のほかにも、院内感染が全国で頻発している可能性がある。
▼職員がインフルエンザに罹患しないための対策は、職員自らが感染源とならないための対策としても重要である。対策としては従来、「ワクチン接種」「日頃の体調管理」「サージカルマスク着用、手洗い励行」等の“基本”の徹底が重要とされてきた。しかしこのうちワクチンの有効率については、1月22日までに、慶大小児科の関連病院の調査でA香港型に対し44%(95%信頼区間:32~50%)という今季の速報値が出ている。昨年12月の段階では60%だった有効率が、その後の症例の蓄積で大きく低下した。ちなみに米国CDCは1月16日、小児の有効率は26%、成人、高齢者(50歳以上)はさらに低くそれぞれ12%、14%で「有意差なし」と発表(http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6401a4.htm?s_cid=mm6401a4_w)。日本のワクチンは、小児では米国より効いているが、けいゆう病院内科(横浜市)の調査では、健康成人に関しては米国同様「有意差なし」という結果になっている。
▼一方、ノイラミニダーゼ阻害剤の予防投与は保険適用外。薬剤耐性化防止の観点から「限定的であるべき」との意見も根強い。しかしインフルエンザに詳しい菅谷憲夫氏(けいゆう病院)は「A香港型では耐性が全く出ていない」として予防投与の必要性を訴えている。エビデンスを精査した上で、関連学会や厚労省も必要な勧告を行っていくべきだろう。
▼流行終息までまだ数週間かかる。ワクチン効果低下など必要な情報を関係者が共有し、真に有効な対策をとっていく必要がある。

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