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ワクチン効果は現場の医師が判断する時代へ [お茶の水だより]

No.4724 (2014年11月08日発行) P.9

登録日: 2014-11-08

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▼今週の「最近気になること」(10頁)のテーマはインフルエンザ。お話を伺った菅谷憲夫氏は、米国CDC、WHO等の世界の専門家グループと情報交換しながら、常に日本の現場の医師の立場から発言を続けている。氏が今シーズンの課題として挙げた4つのトピックのうち、特に読者の先生方に注目していただきたいのが「新しいワクチン効果判定法」だ。
▼インフルエンザワクチンは流行ウイルスの変異により効果が毎年変化する。効果の確認は手間のかかる作業で、一部の専門家のみ実施可能な研究だった。しかし、この新しい方法を使えば、個々の病院・診療所で簡単・正確に実施できる。「今後ワクチン効果は専門家の手を離れ、現場の医師が個々にデータを集めて解析し、ワクチン接種をするかどうか自ら判断する時代になる」と菅谷氏は期待を込める。
▼新しいワクチンについても同様だ。インフルエンザワクチンは、来シーズンにはB型の2種類の系統株が組み込まれて4価となり、B型の有効性は改善されると考えられている。一方、鶏卵内での抗原変異が起きない「細胞培養インフルエンザワクチン」の実用化には時間が必要。コスト増加で価格が上昇する可能性もある。バキュロウイルスにHA遺伝子を導入して昆虫細胞で培養後、HA蛋白を精製抽出して製造する「レコンビナント・ワクチン」は欧米で認可され、短期間での製造が可能という。これらのうちどれを使っていくかは今後各ワクチンが実用化された時点で、新しい効果判定法で調べればよい。従来の不活化ワクチンとの比較も可能だ。菅谷氏は「臨床医が効果や副作用をきちんと診て、その検証を基に、広く国民で議論して選択すべき」と指摘する。
▼一方、治療薬については、昨シーズン札幌を中心に流行したタミフル耐性ウイルス(H1N1/09)や、今年4月BMJに発表されたコクラン共同計画のタミフル、リレンザのメタ解析の論文等が話題になった。コクランの論文はノイラミニダーゼ阻害薬には重症化防止効果の証明がないと指摘したが、CDCは翌日すぐに反論、ノイラミニダーゼ阻害薬を使用する治療方針に変更はないと明言している。コクランについては、医療費を抑えるため積極的な治療も薬の備蓄もしたくない英国政府に都合が良い論文だったという見方もできるだろう。治療薬の選択もワクチン効果と同様、欧米のデータやマスコミ報道を鵜呑みにせず、現場の医師が臨床データを基に決定すべきことを改めて強調しておきたい。

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