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循環器病の診療体制構築に向け議論開始 - 医療機関の役割分担を明確化へ [次期医療計画]

No.4811 (2016年07月09日発行) P.8

登録日: 2016-07-09

最終更新日: 2016-12-08

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【概要】循環器病の診療提供体制構築に向けた検討が始まった。厚生労働省は10月末をメドに中間取りまとめを行い、次期医療計画に反映することを目指す。循環器病は適切な診断と治療が重要との観点から、医療機関の役割分担を明確化した上で診療提供体制を構築する方針だ。


日本の死因別死亡割合のトップはがんだが、心疾患は2位、脳血管疾患は4位とともに高く、要介護に至る原因では脳血管疾患が最も高い。こうした状況を踏まえ、厚生労働省の「脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方に関する検討会」が6月30日、初会合を開催。2018年度から始まる次期医療計画への反映を目指し、10月末をメドに中間取りまとめを行う。

●永井座長「慢性期的な視点での評価も必要」
検討会の座長には自治医大学長の永井良三氏が就任。初会合では、厚労省と専門委員から循環器病の診療提供体制の現状と課題が説明され、その後委員による意見交換が行われた。
循環器病では、適切な診断に加え重症度や病態に応じた治療が重要になる。しかし、例えば脳梗塞発症後4.5時間以内が適応となる再開通療法(t-PA療法)の実施率が脳卒中専門施設に搬送された患者のうち5~6%にとどまるなどの現状がある。そこで厚労省は、医療機関に求められる役割分担を明確化した上で診療提供体制を構築することが必要として、疾患ごとに役割分担のイメージ案(表)を提示。脳卒中、急性心筋梗塞、急性大動脈解離における治療を、(1)初期対応、(2)専門的医療、(3)高度な専門的医療─に分類し、各役割について評価指標を設ける方針を示した。
厚労省案は概ね支持されたものの、委員からは別の角度からの検討を求める声も上がった。永井座長は循環器病は再発を繰り返すのが特徴とした上で、施設の評価指標に「慢性期的な視点での治療データを加えてほしい」と要請。リハビリテーションなど再発防止を含めた総合的評価の必要性を強調した。また、磯部光章委員(東京医歯大)は、循環器病の専門的治療は難易度が高いことから成績の良い病院に患者が集まる傾向が強いと指摘。「治療の質の均てん化をどう図るか」を重要な課題に挙げた。

●地域によっては搬送体制の充実が優先か
地域ごとの医療事情による問題も指摘された。小川彰委員(岩手医大)は、「岩手では初期対応から高度な専門的治療までを各医療圏で1カ所が担うため、搬送体制の充実が重要」と訴えた。これを受け、厚労省は具体的な検討を進めるワーキンググループに救急を管轄する総務省の担当者を招く方針を示した。

【記者の眼】
循環器病を巡っては議員立法で「脳卒中・循環器対策基本法案」を提出する動きが超党派で出ている。がん対策では基本法に基づき「がん対策基本計画」が策定され、一定の成果が上がっている。検討会の議論の実行性を高めるためにも早期の成立が期待されるところだ。(T)


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