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丸山理事長「我々のプログラムと専攻医たちを守る」 - 研修内容巡りプライマリ・ケア連合学会でシンポ [総合診療専門医]

No.4809 (2016年06月25日発行) P.8

登録日: 2016-06-25

最終更新日: 2016-12-07

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【概要】新専門医制度が来年度実施の可否を巡り混迷の様相を呈しているが、新設される総合診療専門医の行く末は─。都内で開催された日本プライマリ・ケア連合学会学術大会(10~12日)より、総合診療専門医をテーマにしたシンポジウムの様子を紹介する。


総合診療専門医を巡って、日本専門医機構の幹部は、「機構が学会の役割を果たすので、来年度から確実に機構認定の専門医が養成される」としている。一方、日本プライマリ・ケア連合学会の丸山泉理事長(豊泉会丸山病院)は学術大会2日目の講演で、同学会の現時点での方針として、「機構に批判はあるが、どんなことになっても我々が始めるプログラムとそれに取り組もうとしている専攻医たちを守る」と語った。
同日開催されたシンポジウム「総合診療専門医の育成に向けて」は、座長の前野哲博副理事長(筑波大)の「新専門医制度は混乱しているが、総合診療専門医をやらないという意見は出ていない。学会と機構、どちらが養成するにしても、どんなことをやるかという議論はぶれていない」との前置きでスタート。総合診療専門研修(表)の内容を巡り、同学会のほか、同研修でローテートが必修とされる内科、小児科、救急科の各診療領域の代表学会、日本医師会から演者が登壇し、求められる総合診療専門医の医師像について語った。

●「各プログラムへの専攻医配置数に課題」
日本プライマリ・ケア連合学会

そのうち、同学会の草場鉄周副理事長(北海道家庭医療学センター)は、従来の学会の「家庭医療専門医後期研修プログラムver.2.0」と総合診療専門研修(表)の違いについて講演。「研修内容、方略、評価方法の骨格はほぼ共通だが、コアコンピテンシーを再編し、外形が固まったのが総合診療専門研修」と述べた。
家庭医療専門医と比べた総合診療専門研修の具体的な改訂点としては、(1)内科学会、小児科学会などの指導医も「特任指導医」として専攻医の指導に当たる、(2)基幹施設と連携施設による研修体制、(3)連携施設は原則として都道府県単位、(4)プログラム管理委員会の設置、⑤救急科研修の強化─などを挙げた。
草場氏は、7月には特任指導医の講習会を始め、来年度の専攻医受け入れに向けて本格始動するとのスケジュールを示しつつ、「既に400弱のプログラムが申請されているが、各プログラムに専攻医がどのくらい配置されるかが懸案事項。全部に少人数ずつ専攻医が配置されると、研修の場としてアイデンティティーの維持が難しくなる」と説明。
また、「短期間で育成した指導医が良質な研修を地域で提供できるか」という点も、今後注視が必要な「課題」とした。

●「総合診療専門医は足りない医療を補う専門医」
日本内科学会

横山彰仁氏(高知大)は日本内科学会の立場から、総合診療専門医の医師像について、「その地域で足りない医療を補う専門医であり、産科の足りない地域では産科をやる」との考えを提示。
総合診療専門医の内科研修については、「プログラムが非常に多様性に富むため、総合診療専門研修のプログラム統括責任者と内科指導医が、事前に研修内容について話し合ってほしい」と求めた。研修内容については、「内科専攻医と同様に入院診療を重視した内容を想定している」とし、「内科研修6カ月目で、主担当医として最低でも20症例は経験してほしい」と説明した。

●「小児科医との協力で地域総合医療の確立を」
日本小児科学会

井田博幸氏(慈恵医大)は、小児科医の立場から見た総合診療専門医に関する考えを「私見」と断った上で展開。総合診療専門医の役割について、「小児医療を小児科医が担いきれない地域は必ず存在する。そういう地域では総合診療専門医が非常に活躍する」とし、求められる「必須」の機能として、①初期救急、②コモンディジーズのプライマリ・ケア、③専門医につなぐトリアージ機能─を挙げた。
その上で、「患者サイドに立てば、重要なのは小児医療を誰が行うかではなく、子ども・家族にとって質と安全・安心が担保されているか。新しい制度ができると、『自分たちの領域が侵される』という反発や葛藤が起こりがちだが、小児科医と総合診療専門医が協力して地域の総合医療を確立してほしい」とした。

●「迅速な意思決定プロセスを修得してほしい」
日本救急医学会

木村昭夫氏(国立国際医療研究センター)は、総合診療専門医の救急科研修について、「救急特有の迅速な意思決定プロセスこそ一番修得してもらいたい」と強調。修得が重視されるスキルとしては、(1)成人の身体診察、(2)院外心停止などにおける死体検案、(3)救急処置・蘇生法─などを挙げ、「局所麻酔下での小手術、適切な切開・摘出・止血法も学んでほしい」とした。
一方で、「救急科専攻医も小手術をやりたくて研修に来ているので、研修施設内でうまく調整しないと症例の取り合いが起こる恐れがある」「三次救急中心の施設では比較的軽症の救急対応は経験しにくいかもしれない」と、指導医と専攻医を目指す研修医向けの注意点も指摘した。
木村氏は研修の到達目標にも言及し、「病院前救護など総合診療専門医に本当に必須なのか疑問に思うスキルや、複数の患者への同時対応、帰宅の判断など、救急科の3年間の研修でも到達が難しい目標も掲げられている」と述べ、見直しの必要性があるとした。

●かかりつけ医と総合診療専門医、「コンピテンシーは同じ」
日本医師会

羽鳥裕氏(日本医師会)は、「人口減少地域では1人の医師が特定の臓器・疾患に限らず幅広い視野で診ることが求められる」と指摘。日医が提唱する「かかりつけ医」と総合診療専門医の違いについては「求められる役割やコンピテンシーは同じ」とし、総合診療専門医の医師会活動への積極参加に期待を示した。

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