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熊本地震の心血管リスク管理で講演 [災害時こそ厳格な血圧管理を]

No.4804 (2016年05月21日発行) P.12

登録日: 2016-05-21

最終更新日: 2016-12-01

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熊本地震から約1カ月。被災者の心血管疾患のリスク管理について、東日本大震災を経験した医師が14日、日本高血圧学会が都内で開いた臨床高血圧フォーラムで講演し、被災地で支援活動を予定する医師向けに注意喚起した。
宮城県災害医療コーディネーターの西澤匡史氏(南三陸病院、写真)は、震災から1カ月以降は慢性期となり、「血圧の管理が重要になる」と強調。東日本大震災の初年度は、通常みられる季節変動による血圧変化が被災者に表れず、「震災のストレスが気温変化のストレスを凌駕し、1年間は通常より血圧が高い値が続いた」と指摘。さらに家族の介護など新たなストレスが加わることで血圧が上昇したり、1年9カ月後の余震による影響でも血圧・脈拍が上昇したことを紹介。「震災によるストレスは個人により千差万別で、ストレスを上手く表現できない高齢者もいるため、血圧の変化が患者のストレスを発見する唯一の手掛かりになる可能性がある」とした上で、「災害時こそ平時に比べより厳格な血圧管理を行い、災害関連死の発症を抑制すべき。震災で助かった命を守ることが我々の責務」と訴えた。
宗像正徳氏(東北労災病院)は、大災害の重層的なストレスが心血管疾患だけでなく、自殺のリスクにもなることから、「今後自殺予防が大きな課題になる」と述べ、受容的態度、傾聴を基本とした心理的支援の重要性を説明した。さらに、復興に関わる行政職員は被災者でもあることを指摘し、行政職員の心血管疾患のリスク管理を行う必要性も強調した。
なお、日本高血圧学会では、『災害時循環器疾患予防に関するガイドライン』や『被災地の高血圧患者さん向けQ&A』等、自然災害の被災者向けの各種ガイドラインとQ&Aをホームページで公開している(http://www.jpnsh.jp/Disaster/guide.html)。

【記者の眼】
熊本地震の余震は今も続く。自宅の倒壊や余震への不安などから、避難者はなお1万人を超え、現在も強いストレスにさらされている。行政職員を含め、被災者の継続的な血圧管理が重要であることを認識した講演だった。(N)

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