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カプラン・マイヤー法を見るときに 気をつけたいポイント [J-CLEAR通信(66)]

No.4813 (2016年07月23日発行) P.40

折笠秀樹 (富山大学大学院医学薬学研究部バイオ統計学・臨床疫学教授 J-CLEAR評議員)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-23

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  • どうしてカプラン・マイヤー法(Kaplan-Meier method)を使うのか

    高血圧患者を対象にして,新規の降圧薬(A群)が標準的降圧薬(C群)に比べて心血管死亡を抑えることを立証したいとしよう。このとき,1年以内の心血管死亡率を比較するだけでよいだろうか。「1年以内だけで十分だろうか」と気にすることもあるだろうが,それよりも気になることがある。たとえば,両群とも100例当たりの心血管死亡例が同じ10例ずつであったとしても,C群では10例すべてが半年以内に起きていて,A群では5例が半年以内で残る5例はその後に起きていたとしよう。このとき,両群が同じ効果と思うのは変であり,A群のほうが優れていると思うだろう。
    この違いを明らかにするのが生存率解析(survival analysis)である。エンドポイントは心血管死亡で同じなのだが,「生存」と「死亡」という静的な二値情報ではなく,心血管死亡が生じるまでの時間データ(time to event data)を扱うのが生存率解析である1)(表1)。早期に起こるほうが危険だと感じるので,動的な,スピードを意識したリスク概念である。同じ心血管死亡リスクではあるが,前者はリスク(risk),後者はハザード(hazard)と区別することがある。


    時間データは数値なのでt検定やウィルコクソン(Wilcoxon)検定で済むと思うかもしれないが,全員が1年以内に死亡しているとは限らない。つまり,心血管死亡が生じるまでの時間は不明というデータとなる。かといって完全に不明ではなく,1年目までに生じなかった場合は,1年超という中途半端なデータになる。途中で転勤して,その後のことは不明という者もいるだろう。その場合は転勤した時点で打ち切りとなる。時間軸の右側が打ち切られているため,右打ち切りデータ(right censored data)と呼ぶ。こうしたデータがあってもイベント率が算出できるような手法を,KaplanとMeierが1958年に提唱した2)。図1 3)はメラノーマでの事例である。生存率(縦軸)が50%の時点(横軸)を生存期間中央値(median survival time:MST),生存率の時間推移を示した曲線を生存率曲線(survival curves)あるいはカプラン・マイヤープロット(Kaplan-Meier plots)と呼ぶ。循環器領域などではイベント発現が少ないため,図2 4)のような持ち上がり型の曲線を描くことが多い。縦軸は累積ハザード(cumulative hazard)となっているが,イベント発現率のことである。

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