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高齢者が5~10歳「若返り」 - 日本老年学会が声明を発表 [日本老年学会・日本老年医学会学術集会]

No.4756 (2015年06月20日発行) P.9

登録日: 2015-06-20

最終更新日: 2016-11-24

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(概要) 日本老年学会と日本老年医学会の学術集会が12~14日に横浜市で開催され、老年学会では高齢者の若返りのデータが発表。老年医学会ではガイドラインの検討状況が報告された。


日本老年学会シンポジウム「高齢者に関する定義の再検討」
受療率低下、歩行速度・知能検査上昇、歯数増加が報告

関連7学会で構成する日本老年学会の「高齢者に関する定義検討ワーキンググループ(WG)」(座長=甲斐一郎日本老年学会理事長、大内尉義日本老年医学会理事長)は現在、高齢者の定義に関する議論を進めている。12日のシンポジウムでは、WGのメンバーが日本人の若返りを示すデータを報告した。

●歩行速度は11歳若返り
秋下雅弘氏(東大)は1996~2011年の厚労省患者調査を用いて、65~79歳の慢性疾患受療率を分析。脳血管障害や虚血性心疾患が10歳若い年齢群と同等レベルになるなど慢性疾患の受療率が低下していた。厚労省の国民生活基礎調査、人口動態調査では要介護認定率、死亡率も低下。秋下氏は「5~10歳の生物学的年齢の低下を示唆する」と分析した。
鈴木隆雄氏(国立長寿医療研究センター)は、東京都老人総合研究所の研究から、65歳以上の身体能力を92年と02年で比較。握力は男性4歳、女性は10歳若い年齢群と同等レベルに向上したほか、歩行速度が男女とも0.1~0.2m/秒上昇。鈴木氏は特に歩行速度について「ものすごく大きな改善」と強調し、「11歳の若返りが認められた」と説明した。
内藤佳津雄氏(日大心理学)は、国立長寿医療研究センターの研究を用いて知的機能の変化を調査。「現在の70代の知能検査の平均得点は、10年前の60代に相当する」と評価した。
那須郁夫氏(日大歯学部)は厚労省歯科疾患実態調査から「20本の歯数は57年で男性50代、女性45歳だが、11年では男女とも65歳」と説明した。
こうした結果から同学会は「10~20年前に比べて5~10歳若返っている」との声明(別掲)を発表。WGは今年度中に報告書を取りまとめる予定だ。


【記者の眼】多様な生き方を尊重する超高齢社会に
WGの荒井秀典氏(京大)によれば、高齢者の定義に世界的合意はないが、多くが65歳以上に設定。高齢者の定義について議論する国は他になく、日本が先駆けて取り組む。
シンポでは社会学者、古谷野亘氏(聖学院大)の講演も注目を集めた。「早めに職業生活をリタイアして(人生を)楽しむなどの多様性を認めることが、豊かな超高齢社会のメルクマールになる」と指摘。会場から生物学的老化と職業の引退時期の関係について多くの質問が上がった。
こうした指摘を踏まえ報告書は、若返りのエビデンスを盛り込むとともに、生き方の多様性を尊重する内容となる見込み。また、高齢者は個人差が大きく、政府の社会保障費抑制策と連動することを避けるため、現在の65歳に代わる新たな年齢を提案することはないようだ。(N)

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