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臨床研究中核病院の承認要件を了承 - 過去に不適正事案も是正措置で申請可能 [改正医療法]

No.4736 (2015年01月31日発行) P.5

登録日: 2015-01-31

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【概要】厚労省検討会は臨床研究中核病院の承認要件を了承した。ガバナンス体制確立を強く求 める一方、過去に不適正事案があっても是正措置が講じられていれば申請可能とされた。


厚生労働省の「医療法に基づく臨床研究中核病院の承認要件に関する検討会」(楠岡英雄座長)は23日に会合を開き、臨床研究中核病院の承認要件の取りまとめ案について了承した。臨床研究中核病院は、改正医療法で4月から制度化され、革新的な医薬品や医療機器の開発の中心的役割を担う存在。新たな保険外併用療養の仕組みとなる「患者申出療養(仮称)」の窓口機能も果たす。今後、厚労省は政省令を作成し、パブリックコメントを経て、4月1日から申請受付を開始する予定。

●不適正事案「厚労省も調査すべき」
臨床研究中核病院が行う「特定臨床研究」は、「医薬品医療機器等法に基づき実施される治験」「『人を対象とする医学系研究に関する倫理指針』に則り実施される介入・侵襲を伴う臨床研究」と定義。承認要件は、(1)実施体制、(2)実績、(3)施設、(4)人員─の4項目でそれぞれ基準が設定された。
ポイントは相次いで発生した臨床研究の不正問題を受け、未然の防止策として、(1)の実施体制でガバナンスの確立を求めている点。病院管理者を中心とした研究管理体制を確立するため、病院管理者の権限と責任を明記した規程・手順書等の整備のほか、病院管理者を補佐する会議体の設置が要件となる。病院管理者は、不適正事案について調査し、必要に応じて改善指示、中止指示、再発防止策の策定、関係者の処分などの役割を担う。
管理体制の取り組み状況を監査する3人以上の委員会の設置も盛り込まれた。管理者からの独立性を確保するため、半数以上は外部委員で構成する。このほか、不適正事案についての告発受付の設置や、申請時点で過去の不適正事案について関係者の処分など是正措置が講じられていることなども求める。会合では、過去に不適正事案があっても申請できる余地を残したことを受け、不適正事案については申請機関の自己申告だけでなく「報道などに基づき厚労省も主体的に調査すべき」との指摘が相次いだ。

●「臨床研究にはこれくらいの要件必要」
(2)の実績では、「過去3年間に自ら実施した医師主導治験が4件以上」または「過去3年間に自ら実施した医師主導治験が1件以上で医薬品・医療機器を用いた医師主導臨床研究が80件以上」や、「査読のある学術誌に掲載され、PubMedに掲載された臨床研究に関する学術論文が3年間で45件以上」などハードルの高い基準が設定された。
(3)の施設では「病床数400床以上で内科、外科をはじめ16の診療科のうち10以上を標榜する病院」、(4)の人員では「臨床研究支援・管理部門に所属する医師・歯科医師が常勤換算で5人以上」などがそれぞれ要件とされた。
実績や人員要件は、現在は予算事業で実施している早期・探索的臨床試験拠点整備事業(6病院)の実績の50パーセンタイル値に基づき設定。厚労省は臨床研究中核病院整備事業(10病院)と合わせ、計16病院の申請を想定しているが、現状では要件を満たさない病院が複数出る可能性も高い。
楠岡座長はまとめとして、「臨床研究を実施するならこれくらいの要件をクリアしなければならない」とした上で、2、3年ごとに承認要件の見直しを行うべきとの考えを示した。

【記者の眼】15年度の厚労省予算案では臨床研究中核病院関連予算として「質の高い臨床研究の推進」に28億円が計上された。質の高さを担保するには、ある委員が指摘したように入れ替えなど競争を促す仕組みの導入も今後は視野
に入れるべきではないか。(T)

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