再生不良性貧血は,骨髄毒性を示す外的要因がないにもかかわらず,造血幹細胞が持続的に減少した病態である。その原因としては,造血幹細胞自体の異常と免疫学的機序(免疫担当細胞による造血幹細胞の傷害)が想定されているが,成人では後者が主と考えられている。
血球減少と骨髄低形成所見が診断に重要である。厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 特発性造血障害に関する調査研究班(特造班)作成の診断基準1)に従って診断する。
上記特造班の「骨髄異形成症候群診療の参照ガイド 令和4年度改訂版」1)に従って治療を行う。重症度と年齢によって治療方針が異なる。
stage 2a以下(輸血を必要としない)の場合は,血小板数が10万/μL以上であれば経過観察か蛋白同化ホルモン〔プリモボランⓇ(メテノロン酢酸エステル)〕の投与とする。血小板数が10万/μL未満の場合は,ネオーラルⓇ(シクロスポリン)による治療(3.5mg/kg/日前後から開始)を行い,8週間経過して無効であればトロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA)〔レボレードⓇ(エルトロンボパグ オラミン),ロミプレートⓇ(ロミプロスチム)〕を追加する。
stage 2b以上(輸血を必要とする)の場合は,患者が40歳以上であれば抗ヒト胸腺細胞グロブリン(ATG)〔サイモグロブリンⓇ(抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン)またはアトガムⓇ(抗ヒト胸腺細胞ウマ免疫グロブリン)〕+シクロスポリン(5mg/kg/日から開始)+TPO-RAによる免疫抑制療法を行う。ATG使用時は,血清病予防のために副腎皮質ステロイドを併用する。
40歳未満の場合は,HLA適合同胞ドナーを有する場合,同種造血幹細胞移植(骨髄移植を推奨)が第一選択とされるが,21歳以上の場合は直ちに移植を行うべきという強いエビデンスはないため,ATG,シクロスポリン,TPO-RAを含む免疫抑制療法を選択してもよい。20歳以下の場合は骨髄移植が推奨されるが,この場合でも本人,家族と治療方針について十分に相談した上であれば,免疫抑制療法を選択することは可能である。
感染予防対策として,好中球減少時(500/µL未満)にはフルオロキノロン系抗菌薬(レボフロキサシン)と抗真菌薬(イトラコナゾール内服液,ボリコナゾール,ポサコナゾール)の投与を行う。また,ATG使用時には抗真菌薬とアシクロビルをリンパ球が回復するまで(少なくとも半年程度)投与する。ニューモシスチス肺炎予防目的のST合剤は骨髄抑制をきたすため原則使用しない。
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