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【識者の眼】「緩和ケアと心理士」西 智弘

No.5192 (2023年10月28日発行) P.60

西 智弘 (川崎市立井田病院腫瘍内科/緩和ケア内科)

登録日: 2023-10-10

最終更新日: 2023-10-10

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緩和ケアチームや緩和ケア病棟には、臨床心理士・公認心理師の資格をもったスタッフ(本稿では心理士と書く)が配されている病院がある。しかし、この心理士にどういった場面で相談したらいいだろう? と迷っている医療者は意外と多いのではないだろうか? 結果的に、本来は心理士が力を発揮できる場面であるにもかかわらず、適切な依頼がされないことで、医療者たちも苦労するし、患者さんや家族も苦しむ結果になってしまうことがある。

そもそも(本稿で述べるところの)心理士とは、臨床心理学をもとにして患者さんの心理状態をアセスメントし、心理介入を行ったり他職種と連携したりしながら、そこにある問題を整理・解決への道筋をつけていく「科学者」でもある。決して「患者さんの身の上話を延々と聞いてくれる人」ではない。

公認心理師法では、その業務について以下のように定義されている。

  1. 心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析
  2. 心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談および助言、指導その他の援助
  3. 心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談および助言、指導その他の援助
  4. 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供

具体的には、緩和ケア病棟で医師や看護師が「対応に困っている患者さん」がいたときに、まず心理士に相談してみる。そうすると心理士は「具体的にどの部分に『困って』いるのか」「困っているのは誰か(患者本人か家族か医療者か)」「なぜその困ったことが生じているのか」「患者さんの病の体験へのとらえ方はどうか」「家族や医療者など周囲の人物との関係性はどうなっているか」「患者さんがこれまで歩んできた人生はどうだったのか」など、患者さんだけではなく周囲の関係性を含めてアセスメントし、必要に応じて他職種の協力も得ながら、その場に起きている心理的構造を明らかにしていくことができる。

その結果として、医療者側の心理的特性や物事のとらえ方の偏りに気づかされることもあるし、患者さんの生育歴などからその方の特徴が見えてくること、またこれまではそういった特徴にどのように対応されてきたかなどがわかることで、患者さんも医療者側も落ちつくことができる……など、心理士が介入することで「こんがらかった糸玉」のようだった人間関係が整理され、スムーズにコミュニケーションが動くようになる場面が多々あるのである。

心理士が配属されている病院は多々あると思うが、あなたの病院では心理士とうまく協力できているだろうか。まずは、困ったことが起きたとき気軽に心理士に声をかけてコミュニケーションをとるところから始めてみてはいかがだろうか。

監修:福島沙紀(臨床心理士・公認心理師)

西 智弘(川崎市立井田病院腫瘍内科/緩和ケア内科)[臨床心理士][公認心理師][関係性の整理]

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