株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

特集:エコーを使った排尿障害の診かた

No.5171 (2023年06月03日発行) P.18

上田朋宏 (泌尿器科上田クリニック院長)

登録日: 2023-06-02

最終更新日: 2023-06-01

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

1987年産業医科大学医学部卒業。2005年京都市立病院泌尿器科部長を経て,12年から現職。京都府医師会理事。NPO法人快適な排尿をめざす全国ネットの会理事長。21年,第73回「保健文化賞」受賞。

1 自覚症状は下部尿路症状(LUTS)
頻尿,尿意切迫感,膀胱痛,尿失禁などの患者の主観的問題点(主訴)が,下部尿路の異常によるものかどうかの評価が必要である。
まず,排尿日誌で1日に何回排尿し,1回にどれぐらい排尿しているかを記録する。1回排尿量を知ると同時に,超音波(エコー)を用いて排尿後の膀胱容量を計測して残尿量を測定することは,排尿管理の基本中の基本である。

2 どんな検査を選ぶのか?
排尿障害を客観的に評価する方法は数多くある。そして多くの検査法から選択するときの原則がある。それは「実践度」であり,正確で安価かつ侵襲が少ないものを選ばなくてはならない。
*実践度=精度×簡便さ/コスト
これを踏まえ,排尿障害の臨床では,以下を選ぶ。
(1)検尿
・感染や血尿の有無を見る。
・目視や臭いのほか,エコーで濁りなどの変化が観察できる。
(2)残尿測定
・排尿後の残尿を測定する。
・エコーで非侵襲的な残尿測定が可能(=痛くない)。
・膀胱容量の測定→(オムツ排尿)→残尿測定
(3)膀胱内圧測定
膀胱の活動性をみる検査である。無抑制収縮を認める排尿筋過活動,排尿筋収縮の低下のある低活動性膀胱,そして正常の膀胱内圧曲線の診断が可能となる。
                                 ◎
これに加えて,治療経過中はエコーで上部尿路の評価も行う。

3 どのように排尿障害を評価するか?
排尿障害は,蓄尿障害(尿がためられない)と尿排出障害(尿を出し切れない)に分類される。蓄尿障害に伴って腹圧性尿失禁,切迫性尿失禁,混合性尿失禁があったとしても,尿排出障害が合併していないとは限らない。
溢流性尿失禁を含め,排尿後の残尿測定をエコーで行うことは,排尿障害の診断に重要である。

4 バルーン留置患者の排尿自立をめざして─エコーの役割
オムツや尿道留置バルーンカテーテルで管理されている患者の排尿自立に向けて,エコーによる排尿状態の評価は重要である。
筆者は1990年,高齢者中心の総合病院に入院していた患者のうち,オムツやバルーンカテーテルで管理されている315人に対して排尿自立をめざす治療を行ったところ,90%の患者が排尿自立となったことを報告した。
その際,下記の「系統的膀胱リハビリテーション」を実施した。

5 エコーは排尿障害の診断・治療における大きな武器
診療報酬の排尿自立支援加算・外来排尿自立指導料の算定において,排尿自立の可能性および下部尿路機能の評価のコアになる部分がエコーである。また,排尿後の残尿量のエコー測定は,排尿障害の治療方針決定だけでなく,排尿自立や排尿管理のために大きな武器となる評価法である。

この記事はWebコンテンツとして単独でも販売しています

プレミアム会員向けコンテンツです(最新の記事のみ無料会員も閲覧可)
→ログインした状態で続きを読む

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top