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【識者の眼】「市民の目からみた健康食品の課題」大野 智

No.5158 (2023年03月04日発行) P.63

大野 智 (島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)

登録日: 2023-02-07

最終更新日: 2023-02-07

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先日、健康食品をテーマにした市民公開講座で講師をする機会があった1)。参加者にアンケートを実施している場合、筆者は可能な範囲で隠し事なくフィードバックしていただくことをお願いしている。今回も様々なコメントを頂いた。

市民や患者向けの講演では、できるかぎり専門用語を使わないように気をつけている。しかし、健康食品に関する国の制度について説明しようとすると、どうしても固有名詞として「特定保健用食品(トクホ)」などに触れる必要がある。そうすると“特定”“保健”といった言葉が、参加者の理解を妨げてしまうことが、今回のアンケートでも垣間見えた。行政側は、あえて分かりにくい言葉を使って利用させないようにしているわけではないだろうが、もう少しイメージしやすい言葉を使ったほうが、国民の理解度が上がるのではないかと感じた。

今回の講演では、健康食品の機能性(効き目)の裏付けとなる臨床試験の結果の読み解き方などを解説するとともに、それを判断材料として「使う・使わない」の意思決定についても筆者と参加者の双方向のやりとりをしながら一緒に考えた。その結果、判断に悩むという人が想像以上に多いことが分かった。

たとえば、連載(No.5126)でも取り上げたYakult1000(Y1000)の臨床試験の結果を消費者庁のデータベース2)を参考に紹介し、参加者に利用してみたいかどうかを聞いてみたところ、8割以上の人が「悩む」と回答した。もしかすると、Y1000の機能性として表示されている「ストレス」「睡眠の質」「腸内環境」に悩みのない人ばかりが参加していて、利用する必要性がなかったためかもしれないが、臨床試験の結果がCMなどから想像される効果と食い違っていたことが「判断に悩む」という結論に影響したことも否定できない。

そうしたとき、消費者の立場で一番困るのが、「どこに相談したら良いのか?」である。講演では、健康サポート薬局なども紹介したが、残念ながら認知度は低かった。日本人のヘルスリテラシーの弱点でもある「困ったときに相談できる窓口を探す」への対策が、健康食品に関しても今後の課題であると考えられた。

【文献】

1)島根大学医学部:市民公開講座「賢い消費者になろう!〜健康食品の上手な選び方、使い方〜」.
https://www.med.shimane-u.ac.jp/docs/2022121900012/

2)消費者庁:機能性表示食品の届出情報検索.
https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc01/

大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法

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