【質問者】
三潴忠道 福島県立医科大学会津医療センター 漢方医学講座教授
【舌診は現状把握の有効な手段。「色と形」→「望診」への展開がポイント】
舌診の修得は,とにかく一人一人の病人さんの舌を「みる」ことです。理屈は要りません。毎日みることです。病人さんの舌を色と形(場合によっては動きも含めて)の分析でとらえようとしても,そこに確たる法則性はありません。多変量解析をもってしても,です。
では,なぜそんな法則性の定まっていない舌診が漢方医学独特の観察方法として重要なのでしょうか。漢方診療では,まず舌をみます。そして,経過を追う中で病人さんが示してくれる「みえども,みえず」を実感していくことになります。病人さんが舌を出している時間はどのくらいでしょう。まあ,長くて10秒くらい,いやもっと短いかもしれません。そこでつかめる所見は,視診(分析してものをみる)のそれではありません。舌診は望診(つま先立ちして遠くの場所全体の雰囲気をつかむ)の一環です。舌はみていますが,舌しかみていないわけではありません。舌を出している病人さんをみているのです。舌を出してもらった瞬間に変わる診察室の雰囲気,雰囲気の変化を私たちが受けとめた時の驚き,病人さんへのさらなる関心,これが大事です。
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