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自己免疫性後天性凝固因子欠乏症[私の治療]

No.5132 (2022年09月03日発行) P.40

山本晃士 (埼玉医科大学総合医療センター輸血細胞医療部教授)

登録日: 2022-09-04

最終更新日: 2022-08-31

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  • 自己免疫性後天性凝固因子欠乏症とは,後天的に特定の凝固因子に対する自己抗体(インヒビター)を生じることにより出血症状を呈する一連の疾患群である。インヒビターには直接に凝固因子の活性低下を引き起こす抗体のほかに,他の蛋白と複合体を形成しクリアランスを亢進させることで凝固因子活性を低下させるものがあり,これにはリン脂質依存性のプロトロンビンインヒビターや第Ⅻ因子インヒビターなどが含まれる。
    自己免疫性後天性凝固因子欠乏症の代表的な疾患は,第Ⅷ因子インヒビターを生じるいわゆる後天性血友病A1)2)であるが,ほかにも第Ⅴ因子,第Ⅹ因子,第ⅩⅢ因子,フォン・ヴィルブランド因子(von Willebrand factor:VWF)などの後天性欠乏症があり3),第Ⅹ因子欠乏症を除く4つの疾患が指定難病となっている。発生頻度は,最も多い第Ⅷ因子インヒビター(後天性血友病A)でも100万人に1.5~2.0人ほどである。本稿では,主に後天性血友病Aについて述べる。

    ▶診断のポイント

    高齢者や産褥婦において原因不明の出血症状(広範な皮下出血や筋肉内出血など)があり,PT(プロトロンビン時間)値が正常でAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)値の延長(80秒を超える高度な延長)を認めた場合,本疾患を疑ってクロスミキシング試験を行う。クロスミキシング試験にてインヒビター型を呈し,第Ⅷ因子活性の低下と第Ⅷ因子インヒビターを同定できれば診断が可能である。なお,基礎疾患として,自己免疫疾患,悪性腫瘍,糖尿病,皮膚疾患(天疱瘡,乾癬など)等を有する症例が約半数を占める。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    出血症状は突発的に起こり,かつしばしば重篤なため,直ちにバイパス製剤による止血治療を行うとともに,可及的速やかにインヒビター消失を目的とした免疫抑制療法を行う。

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