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【識者の眼】「精神科医療体制の中で神経発達症にどう対応するか」本田秀夫

本田秀夫 (信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授)

登録日: 2022-08-03

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かつて、神経発達症は児童精神科医によって診断されるものと考えられていた。しかし、2000年代に入り、知的障害を伴わない自閉スペクトラム症や不注意優勢型のADHDなど、成人になって初めて一般の児童を対象としない精神科医療機関に受診するケースが激増した。今では、初診患者の2〜3割に何らかの神経発達症の診断がつくという精神科医療機関が稀ではなくなっている。

一方、多くの大学に児童精神科の講座が設置されておらず、神経発達症に関する勉強が卒後の自主的な研修受講等に委ねられているわが国において、多くの精神科医が神経発達症の診療に及び腰である印象を受ける。神経発達症の診療を積極的に行うことを明言したら受診者が殺到し、瞬く間に予約が取れなくなったという医療機関の話を耳にする。そのような中で、的外れな知能検査・脳波・画像検査で「神経発達症が診断できる」などと謳う医療機関や、エビデンスがあるわけでもない治療法で神経発達症を改善するような印象を与える医療機関の広告を目にする機会が増えてきた。需要が供給に追いつかない現状で、神経発達症の誤診や詐欺まがいの治療行為の被害者が出ているのではないかと危惧している。

神経発達症の医療ニーズは、人口の1割程度と推定される。より多くの精神科医療機関で神経発達症に対する適切な診療が標準的に行われるよう、国や自治体は医療体制の整備を推し進めていく必要がある。成人になって初めて受診する人における神経発達症の診断には、本人との面接、詳細な生育歴・発達経過・現在の生活における支障に関する聴取および資料収集、神経発達症に特化して開発された評価ツールなどを組み合わせて慎重に行う必要がある。すべての医療機関にそのスキルが行き渡るには時間を要するため、当面は各地域の一次・二次・三次医療の医療体制を活用する方法を考えるべきであろう。

ここで鍵となるのは、二次医療である。神経発達症に関してエビデンスに基づく標準的な診断・評価・治療が完結できる二次医療としての精神科外来を、医療圏ごとに最低1箇所は設置していく必要がある。その上で、二次医療機関による診断・評価・治療方針をもとに地域の精神科一次医療機関で医療が供給できるような連携体制の構築が望まれる。

本田秀夫(信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授)[児童精神科]

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