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【識者の眼】「『コロナ(ワクチン)後遺症』をビジネスにする医師たち」谷口 恭

No.5129 (2022年08月13日発行) P.59

谷口 恭 (太融寺町谷口医院院長)

登録日: 2022-07-26

最終更新日: 2022-07-26

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「識者」と呼ばれるには力不足だが、都心部の診療所から総合診療医のホンネを述べたい。今回が全12回の第7回目。 

当院はウェブサイトで「コロナ(ワクチン)後遺症外来」などと謳っているわけではないが、メルマガやメディアに僕が書いた記事を読んで受診する初診患者が時々いる。コロナ後遺症が存在することを僕が確信したのは2020年の春、以前から当院をかかりつけにしている患者だった。その後、SARS-CoV-2感染後の倦怠感、味覚・嗅覚障害、脱毛などを訴える患者が相次いだ。そして、感染後に(感染したと思い込んでいる者も含めて)何らかの症状が持続するケースを「ポストコロナ症候群」と呼ぶことにした。

コロナワクチンが始まってからはワクチン接種後の後遺症の相談が寄せられるようになった。長引く倦怠感や頭痛、安静時心拍数の上昇といった訴えが多く、他には、長らく落ち着いていた片頭痛が高頻度に再発するようになった、帯状疱疹を発症しその後疼痛が続く、といった訴えも目立つ。

しかしながら、コロナ後遺症もコロナワクチン後遺症も、長期間にわたり症状が持続する症例があるのは事実だが、ほとんどのケースは数カ月でほぼ治癒する。だが、メディアは症状が長引いている例を取り上げ、難治性で重症化しやすいと強調し、あたかも不治の病のような印象を視聴者に植え付けようとしている。

そして、この点に目を付けたのか、自費診療で高額な治療費を請求するクリニックが登場しだした。当院を初診で受診する患者には、こういったクリニックで“被害”に遭った者が少なくない。「このクリニックはあやしい」と感じるようになり、あるいは「これ以上お金が続かない」といった理由から助けを求めに来るのだ。

ある患者は「言われるがままに膠原病や女性ホルモンの検査をされて数万円もとられた」と言っていた。別の患者は「数千円もするグルタチオンの点滴を毎回勧められて貯金が尽きた」と嘆いていた。「イベルメクチンを高額で買わされた」と憤っていた患者もいた。それに、彼(女)らのほとんどは、診察代は保険診療だったと言う。これは混合診療ではないのか。

ある患者は「ようやく後遺症を診てくれる先生が見つかって、最初はその先生が神様のようにみえたのですが……」と嘆息をついていた。「神様は高額を請求しません」と僕は答えた。

谷口 恭(太融寺町谷口医院院長)[新型コロナウイルス感染症]

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