株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「経団連の新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン改訂に関わって」和田耕治

No.5123 (2022年07月02日発行) P.54

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2022-06-20

最終更新日: 2022-06-20

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日本経済団体連合会(経団連)の新型コロナウイルス感染予防対策ガイドラインの改訂に関わる機会をいただいた1)。報道でも取り上げられたように、感染対策の一部が省略された。産業医として訪問する際に話題にして、事業所ガイドラインの見直しを検討してはどうであろうか。

留意が必要なのは、経団連の会員へのガイドラインであることと、対象となる事業所はオフィスと製造事業場という、比較的感染リスクの低いまたは対応しやすい場であることである。飲食や対面でのサービスがある場合にはリスク評価が変わるため、対策も変わりえる。

接触感染対策については、手洗いは基本的な感染対策として必要であるが、設備や物品など環境の消毒に関する記述は省略とした。米国CDC2)においても、環境を介しての感染は限定的であるとしている。ただ、すべての場所で不要としているわけでなく、食堂などにおいてテーブルを共有する場合には食事が終わったら拭き取りを行うというのは、感染者が確認されている間は継続が必要かもしれない。飲食やサービス業のガイドラインなどで検討していただくことになるであろう。

オフィスのパーティションはあまり記載がないので、筆者の意見を示す。パーティションを机同士の間に設置するのは近距離での飛沫を遮蔽する効果はあるだろう。たとえば、机で昼ご飯を食べながらお話される場合や、電話で長くお話をされ、マスクをついつい外してしまうこともある状況では、パーティションはあってもよいかもしれない。ただ、向かい合う机であっても距離がとれていて、基本的にマスクをしており、換気もされているのであれば、机同士の間にパーティションは必要ないだろう。既に設置されているなら外すかどうかは相談されればよいが、これから新たに予算をとって設置するほどではないと考える。

それぞれの職場において、こうしたガイドラインをもとに自分たちの対策について衛生委員会などで話し合うことが大事である。中には、対策を緩めることに不安を感じる職員もいるかもしれないので、丁寧に説明することになる。また、過去に行っていた対策を否定するような議論にならないよう配慮が必要である。

他の業界団体で事業者ガイドラインを持っている際には専門家を交えて議論をして、改めて今後も必要な対策などを検討する時期にある。

【文献】

1)https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/064.html

2)https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/science/science-briefs/sars-cov-2-transmission.html

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top