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【識者の眼】「新型コロナウイルス感染症対応の検証」草場鉄周

No.5119 (2022年06月04日発行) P.56

草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)

登録日: 2022-05-26

最終更新日: 2022-05-26

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政府は岸田総理の指示でこれまでの新型コロナウイルス感染症対応を振り返り検証することとなり、5月より新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議を発足した。筆者は医療関係者、特にプライマリ・ケア領域に関する専門家として本会議のメンバーとして参画している。

さて、現在、会議が現在進行形で原則非公開ということもあり、その議論の詳細を記すことはできないが、公開資料に基づいて全般的な印象を共有したい。政府のコロナ対策はⅠ〜Ⅳ期に区切られ、それぞれで感染拡大が持つ性質やスピードが大きく変化した。オミクロン株蔓延の現在からみると2020年の感染者数は実に小規模だが、ワクチン接種がないため感染者の重症化率は高く、重症高齢患者への診療がメインテーマであった。しかし、2021年にワクチン接種が進み、デルタ株に変異が進むと、感染の急拡大とワクチン未接種の中高年患者の重症化、そして医療の逼迫が大きな問題となった。そして、2022年のオミクロン株は小児も含む家庭内感染と社会活動のバランスがテーマとなっている。

このように俯瞰すると、まるで異なる感染症に都度対策せざるをえなかった感があり、政府の困惑と苦労が理解できる。ただ、今回の議論で感じるのは、政府から発出した様々な通知や事務連絡が実に多様で広範囲であったこと、そして、地方自治体や医療機関は多忙な中で十分にそれに応えられなかったことである。いわゆるPDCAサイクルを回すことができず、中央で対策は発出済みだが、地方では実行には至っていないというフェーズが多々あった。そして、このギャップの中で救える命が救えなかった。

そこで、繰り返し指摘されるのはデータ収集の手間と困難さである。クラウド型データベースへの現場での随時入力でなく、手書きの書類をFAXで送付し中央で一括入力というスタイルが主流だったことが致命的であった。医療に関する個人情報をデータベースにしてこなかったつけが回ったわけである。

いずれにせよ、検証作業は危機管理のシステムにとどまらず、平時からの行政組織のあり方、医療提供体制のあり方に踏み込まざるをえないと痛感する。6月までという短い時間ではあるが本質的な議論を展開したい。

草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療][新型コロナウイルス感染症]

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