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腹部大動脈瘤の治療 【開腹手術に比べてステントグラフト治療が増加したが,わが国でのその有用性は未確定】

No.4822 (2016年09月24日発行) P.53

田中裕史 (神戸大学心臓血管外科・低侵襲外科特命教授)

登録日: 2016-09-23

最終更新日: 2016-10-06

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腎動脈下腹部大動脈瘤に対しては,開腹人工血管置換術が標準治療として行われてきた。しかし,2007年にわが国に企業製のステントグラフトが導入されて以降,ステントグラフト症例数は増加する一方である。12年の日本血管外科学会の集計では,開腹手術,ステントグラフト治療がほぼ同数となっている。

ステントグラフト治療は開腹手術と比し,①手術死亡が少ない,②遠隔期の死亡率は同等,③再治療が多い,とされている1)。また,合併症により開腹手術非適応の症例群にステントグラフトを行ったところ,無治療群と比して大動脈関連死亡は減少したが,遠隔期の生存率には差がなかったと報告されている2)

これらの無作為試験は欧米での成績である。わが国では開腹手術の死亡率は欧米と比して低く,これらの報告と同様の結果が得られるかは,今後の結果を待つ必要がある。

【文献】

1) De Bruin JL, et al:N Engl J Med. 2010;362 (20):1881-9.

2) Greenhalgh RM, et al:N Engl J Med. 2010;362 (20):1872-80.

【解説】

田中裕史 神戸大学心臓血管外科・低侵襲外科 特命教授

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