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【識者の眼】「『総合内科』は内科のサブ領域である」横山彰仁

No.5111 (2022年04月09日発行) P.60

横山彰仁 (高知大学呼吸器・アレルギー内科学教授)

登録日: 2022-03-23

最終更新日: 2022-03-23

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近年、内科領域は細分化され、各領域の学問的進歩は目を見張るものがあり、大学や大病院では内科診療科の専門分化が進んでいる。しかし、地域では各専門内科医を揃えることは困難であり、総合的能力を持つ内科医のニーズが高い。このため、内科医の供給と需要にミスマッチが生じているのが現状である。

もちろん、サブ専門医も鑑別診断や患者のより良いケアのためには、総合内科的な能力が必要である。しかし、サブ専門医の中には、特定の専門性に従事する状況から、総合性の比重が下がる傾向がないわけではない。総合内科的な能力の養成については「総合内科専門医」が50年の専門医制度として定着している。総合内科的能力の証明でもあり、「内科」という専門領域の中ではより高い能力を発揮できる。現在、その「総合内科専門医」の公的位置づけに関する議論がある。私は総合内科が「サブ領域」に相当し、内科専門医の2階に公的に位置づけるべきものと考えている。本稿ではその理由を述べたい。

総合内科専門医には高い専門性がある。内科専門医も幅広く研修を積まねばならないが、総合内科領域はさらに長く幅広く研修することが必要であり、幅広さ・総合性は内科専門医のサブに位置づけるにふさわしい専門性と考える。独り立ちした内科専門医が、その上で各分野を統合する診断力や複数のアクティブプロブレムに対応する、「横断性」のサブ領域という考えである。generalityは内科本来の姿ではあるものの大変困難な道であり、公的資格とならねば、ともすると細分化された専門性に安住してしまう恐れもある。

総合内科専門医を2階に置かない場合、内科領域は専門分化した医師を養成するだけでよい、という誤ったメッセージを若い医師に与えかねない。現在、内科学会は指導医に総合内科専門医を持つことを推奨している。医師の研修は指導医の背中を見て育つ側面もある。総合内科専門医が公的認定を受けないと、よりジェネラルなマインドを持つ内科医の育成に支障が生じうる。これでは「内科医は地域で幅広く患者に対応すべきである」とする国の施策とも相いれず、医師不足も解決できなくなってしまいかねない。サブ領域の専門医は原則2つまでという規定があるが、総合内科専門医を例外的に扱う方策も考えられる。

地域を診る医師として「総合診療専門医」が誕生したが、その数はまだ少ない。ジェネラリスト養成の観点から、内科専門医と総合診療専門医のダブルボードが始まり、今後、補完しあうことで診療や研修の充実が図られるものと考える。わが国の限られた医療資源において、質の高いジェネラリスト養成が一層求められており、総合内科専門医は、既に半世紀の歴史を持つ専門医として、内科の総合性を担保する役割を担ってきた。本専門医を公的に内科サブ領域に位置づけることは、内科の専門分化に相対する総合性の旗印として必須ではないだろうか。

横山彰仁(高知大学呼吸器・アレルギー内科学教授)[総合内科専門医]

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