株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

自己免疫性溶血性貧血(AIHA)[私の治療]

No.5088 (2021年10月30日発行) P.48

池添隆之 (福島県立医科大学血液内科学講座主任教授)

登録日: 2021-10-31

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 赤血球膜抗原に対する自己抗体が後天性に産生され,この抗体が抗原と結合し,抗原抗体反応が生じる結果,赤血球が破壊されて貧血を発症する。自己抗体の至適反応温度が体温付近か4℃前後かによりそれぞれ温式と冷式に分類される。両病型ともに基礎疾患の有無により続発性と特発性,臨床経過により急性と慢性に分類される。温式抗体による自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia:AIHA)が全体の約90%を占め,原則としてIgGが関与しており,これを単にAIHAと呼ぶことが多い。冷式抗体によるものにはIgM抗体による寒冷凝集素症(cold agglutinin disease:CAD)とDonath-Landsteiner抗体による発作性寒冷ヘモグロビン尿症(paroxysmal cold hemoglobinuria:PCH)とがあるが,後者は非常に稀である。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    全身倦怠感,めまいや労作時息切れなどの一般的な貧血症状に加え,CADでは四肢末端,鼻尖,耳介などの低体温部位で赤血球凝集が起こるため,循環不全によるチアノーゼやRaynaud現象を認める。

    【所見】

    貧血が高度になると心不全に伴う所見を認める。温式AIHAでは1~2横指程度の脾腫を32~48%程度の頻度で認める。10~15%の頻度で温式AIHAは特発性血小板減少性紫斑病を合併し,Evans症候群と呼ばれる。

    【検査】

    血清LDHと血清間接ビリルビン上昇,血清ハプトグロビン低下,網赤血球増加などの溶血性貧血の所見に加え,温式AIHAでは直接Coombs試験でIgG±補体成分が検出される。臨床症状に加え,寒冷凝集素価の64倍以上の上昇と直接Coombs試験で補体成分が検出されればCADと診断できる。

    残り1,987文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top