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伝染性紅斑(リンゴ病)[私の治療]

No.5087 (2021年10月23日発行) P.46

岸部麻里 (旭川医科大学皮膚科学講座准教授)

登録日: 2021-10-23

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  • 伝染性紅斑は,ヒトパルボウイルスB19(以下,B19)感染症である。感染経路は主に飛沫感染であり,潜伏期間は4~15日である。小児では,俗にリンゴ病と呼ばれる顔面の特徴的な紅斑を生じる。成人の約50%は不顕性感染で終わるが,関節痛や手足の腫脹を生じることがある。B19感染は,母体感染による胎児水腫,先天性溶血性貧血患者の無形成発作(aplastic crisis),免疫不全患者の慢性骨髄不全にも関与する。

    ▶診断のポイント

    幼小児(2~12歳)に好発し,微熱や咽頭痛などの感冒様前駆症状のあとに両頰部の平手打ち様紅斑が出現する。1~2日後に上肢伸側に爪甲大の斑状紅斑が出現し,網目状ないしレース状紅斑となる。大腿部や臀部,体幹にも出現し,瘙痒を伴うことがある。特徴的な皮疹から診断は容易である。

    成人の場合,関節痛をはじめとする膠原病に似た多彩な症状を呈することが多い。小児のような特徴的な皮疹を生じることは少なく,風疹様の紅斑・丘疹,紫斑,gloves and socks症候群などがみられることがある1)。皮疹の有無にかかわらず,対称性多関節痛や手足の浮腫性腫脹があれば本症を鑑別に入れ,接触歴,職業(患児に接する機会が多い保育士,教師,病院職員などはリスクが高い),地域の流行状況,ウイルス学的検査などを参考に診断する。

    ウイルス学的検査のうち保険適用があるのは,紅斑が出現している15歳以上の成人についてB19感染が強く疑われB19 IgM型ウイルス抗体価を測定したときのみである。保険適用外だが,ペア血清によるB19特異的IgG抗体価の上昇,PCR法によるB19 DNAの検出も診断に有用である。B19 DNA検査は,感度は高いが皮疹消失後も数カ月間は陽性となるため,最近の感染を証明できない可能性がある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    自然治癒を待つ。瘙痒や関節痛などが強ければ対症治療を行う。妊婦,遺伝性溶血性貧血患者,免疫不全患者への感染では合併症への対応が必要となる。

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