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【識者の眼】「東アジア伝統医学の国際化と標準化(1)─その背景」並木隆雄

No.5075 (2021年07月31日発行) P.66

並木隆雄 (千葉大学医学部附属病院和漢診療科科長・診療教授)

登録日: 2021-07-15

最終更新日: 2021-07-15

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新型コロナもワクチンの普及で次第に落ち着いてきたので、専門の漢方の話題を紹介したい。今回から4回に分けて、東アジア伝統医学の標準化を紹介する。このことは、あまり知られていないかもしれないが、21世紀になってから、特にここ10年進展した。それは、経済や政治の分野と同じで、中国の対外政策によるところが大きい。現在の中国は1帯1路(one belt,one road)政策を海外の国での行動指針の一つとしているが、伝統医学についても同様である。世界中の保健機関や学術団体に多くの人材を送り込み、勢力を広げるべく活動している。その中の一つの重点分野が、伝統医学ということである。

日本の伝統医学(漢方医学)は、約1500年前に古代中国に由来する医学が日本に伝来し、その後日本の気候や風土、食事など生活環境などの影響のもと発展した。さらに、江戸時代には、理論においても中国の伝統医学と異なる方向に独自に進化した。現在日本の漢方医学の主流派は、現代医学と融合した形の医療を実践し、いわば、世界で最もユニークで最先端の統合医療となっている。すなわち、漢方医学は古代中国医学から派生した中国(中医学)や韓国(韓医学)と同根ではあるが、全く別の医療体系となっているといっても過言ではない。その違いの例を出すと、漢方医学では「水毒」という言葉があるが、中医学や韓医学では使わない。そのような背景から10年くらい前より、東アジアの伝統医学(東洋医学)というより、個別の医学名(漢方医学)で呼ぶようになった。このことは、一般の人よりも英文専門誌でかなり浸透している(漢方医学はKampo medicineと呼ばれ、中医学はTraditional Chinese medicine、韓医学はHan medicineという)。

医師ライセンスに関しては、日本は現代医学の医師が漢方医学を実践する(1国1制度)が、中国・韓国は現代医学と伝統医学の医師が分かれている点(1国2制度)が異なる。

さらに、日本と比較して、両国とも国からのサポート体制がかなり異なる。例えば、自国の伝統医学を重視している象徴的な例として、両国ともにユネスコの世界記憶遺産への登録に熱心である。中国では『黄帝内経』や『本草綱目』などの古典書籍、韓国では、その生涯がドラマ化された許浚がまとめた『東医宝鑑』(1613年)が登録された。日本では、韓国の医書よりはるかに古い『医心方』(984年)があるが、未申請である。

そのような温度差の中、東アジアの伝統医学の国際化と標準化が始まった。次回は具体的に状況を紹介する。

並木隆雄(千葉大学医学部附属病院和漢診療科科長・診療教授)[漢方]

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